菅野です。
日経の会員限定ですが、以下のような記事がありました。
内容をご確認いただければと思いますが、ものすごくざっくりまとめると
「不動産取引の透明化について、様々な施策や案が出てきたが、全部不動産業界の反対でつぶされている」
というものでした。
だいたいあってる。
不動産取引の透明化について政府から「不動産ID」というものでいろいろな情報を紐づけよう、という案が出ています。
不動産IDで出来そうなこととして記事中で挙げられているのが
・重要事項説明に必要な固定資産税額、都市計画、道路や水道管の状況を簡単に取得できる
・物件検索サイトに掲載された成約済みの「おとり物件」を自動的に判別して排除できる
・成約価格や建物の修繕履歴等を利用して価格査定が高精度で可能になる
のだそうです。
1つ目は、不動産の調査が楽ちんになります。わざわざ現地の管轄の役所に出向く必要もなくなるということです。
2つ目は、意図的なおとり広告が排除でき、業者にとっても勝手に成約物件を削除してもらえるのは非常に便利です。
3つ目なんか、実現したら不動産鑑定士なんか要らなくなってしまいますね!
でも、取引の透明化、というのは難しい部分も非常に大きいです。
記事中にもあるのですが、不動産価格について日本では個人のプライバシーという考え方があり、取引価格を公表するのは不動産業界にとどまらず広く反対があるのではないかと予想されます。
不動産取引についてのデータ連携というのは、「個人情報保護」という、進撃の巨人のウォール・マリアのような大きな壁があり、なかなか一筋縄ではいかないのです。
とにかく日本の法律の建付けは個人の権利というものを重くおいているので、有事法制の議論なんかもそうですが、個人の権利の制限に関しては世間が非常に厳しく反応します。
その個人の権利の中に「プライバシー権」というものもあり、少し戻りますが不動産の取引価格の公表は「プライバシー権の侵害」となる可能性が大きいわけです。
公共の福祉と個人の尊重というものは二律背反しやすく、政治でも「自由主義」と「社会主義」とは本来、対立する命題なわけです。
(しかしながら日本ではリベラルというと、どちらかといえば社会主義・共産主義的思考の方が多いように見え、矛盾を感じてしまいますが)
不動産の取引というものが「公的」なものであるという認識が欧米のように広まっていけば、そういった透明化は進むかもしれません。
でも正直なところ、私も自分の家をいくらで買って、いくらで売れたかというのを公表されたくはありません。
一人一人の考え方を変えていくということは、なかなか難しいかな、とも思うのです。
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