REDSエージェント、宅建士・宅建マイスターの森山賢治です。今回は宅地を造成するときの工事の方法である「盛土」と「切土」について解説します。
盛土とは、傾斜地や低地に土砂を盛り上げ、平らな地盤面にする工法です。一方、切土とは、傾斜地などの土地を平らにするために、地面を削りとって地盤面を低くする造成工事です。
(画像はイメージです)
盛土と切土の問題点
1.自然災害のリスク:盛土や切土は地震や豪雨などの自然災害に対して弱いです。特に盛土は地震時に地盤沈下や土砂崩れが発生しやすく、切土ものり面の崩壊リスクがあります。
2.不同沈下のリスク:盛土部分と元の地盤の間で沈下の程度が異なるため、不均一な沈下(不同沈下)が発生しやすいです。これにより建物の基礎が不安定になる可能性があります。
3.地盤の安定性:盛土は元の地盤と新たに盛った土の間にすべりやすい層ができるため、地盤の安定性が低下します。切土も地山の除荷によるリバウンドやクラックの発生が問題となります。
4.排水問題:盛土や切土の施工において、適切な排水対策が取られていないと、雨水の浸透や地下水の影響で地盤が不安定になることがあります。特に盛土では排水層の設置が重要です。
5.法的規制とコスト:盛土や切土に関する法的規制が厳しく、適切な地盤改良や擁壁工事が必要です。これに伴うコストも高くなることが多いです。
盛土や切土に関連する具体的なトラブル事例
1.住宅の不同沈下:盛土地盤上に建てられた住宅が、築後数ヶ月で数cmの不同沈下を起こりました。原因は地盤調査不足と盛土地盤の支持力不足でした。
2.擁壁のひび割れと変形:河川背面の住宅で、盛土地盤の変形と擁壁のひび割れが発生しました。新築住宅の荷重増加が原因で、擁壁背面のすべり破壊が起こりました。
3.盛土造成地の地盤変状:盛土造成地で、家屋の変形と沈下、側溝のクラックが発生しました。盛土材の劣化と降雨による地下水面の形成が原因でした。
4.斜面崩壊:花崗岩斜面の擁壁背後で、埋土と崩積土が擁壁とともに崩壊しました。降雨による浸透圧の増加が原因で、斜面全体が不安定化しました。
5.切土のり面の地すべり:切土の進捗に伴い、のり面の両側で小崩壊が発生し、最終的にのり面全体が不安定化して急速な地すべりが発生しました。これは、かつて不安定化した自然斜面が再活動したためです。
盛土や切土に関連するトラブルを防ぐための方法
1.地盤調査の徹底:施工前に詳細な地盤調査を行い、地盤の特性や安定性を把握します。これにより、適切な地盤改良方法を選定できます。
2.適切な排水対策:盛土や切土の施工時には、排水設備を適切に設置し、雨水や地下水の影響を最小限に抑えることが重要です。排水層や排水管の設置が効果的です。
3.高品質な材料の使用:盛土には良質な土砂を使用し、薄層ごとにしっかりと締め固めることで、地盤の安定性を高めます。これにより、不同沈下のリスクを減少させます。
4.のり面保護工の実施:切土や盛土によって生じた斜面(のり面)には、植生工やコンクリート構造物工などののり面保護工を施し、斜面の崩壊を防ぎます。
5.定期的な点検とメンテナンス:施工後も定期的に地盤や擁壁の状態を点検し、必要に応じて補修や補強を行います。これにより、長期的な安全性を確保します。
盛土と切土の施工基準
1.盛土のり面勾配:盛土の高さや材料に応じて、のり面の勾配を設定します。例えば、粒度の良い砂や礫を使用する場合、盛土高が5mまでなら1.5:1の勾配が標準です。
2.排水対策:盛土内の排水を確保するために、水平排水層や地下排水溝を設けます。これにより、浸透水や湧水を盛土外に排出し、地盤の安定性を保ちます。
3.地震時の安定性:重要な盛土については、地震動を考慮した安定性の照査を行います。盛土の設計には、常時の作用、降雨の作用、地震動の作用に対する要求性能を設定し、それを満足することを確認します。
4.切土のり面勾配:切土のり面の勾配は、地山の土質や地質の種類、状態、高さに応じて設定します。例えば、硬岩の場合は0.3:1、中硬岩の場合は0.5:1が標準です。
5.のり面保護工:切土や盛土によって生じた斜面には、植生工やコンクリート構造物工などののり面保護工を施し、斜面の崩壊を防ぎます。
これらの基準を守ることで、盛土や切土の施工における安全性と安定性を確保することができます。
購入前に土地地盤の良し悪しを判断するための方法
1.地盤調査の実施:地盤調査は、土地の地盤の強度や安定性を評価するために行われます。一般的な方法としては、スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)やボーリング調査があります。SWS試験は、ドリルを地盤に差し込み、回転させて地盤の強度を測定する方法です。
2.土地条件図の確認:国土地理院が提供する「土地条件図」を利用して、土地の地形や地質を確認します。これにより、その土地がどのような土から構成されているかを推測できます。例えば、台地や段丘は比較的地盤が良好とされています。
3.ハザードマップの利用:市役所やインターネットで入手できるハザードマップを確認し、土地が洪水や地震などの自然災害に対してどの程度のリスクがあるかを調べます。これにより、地盤の安全性を評価できます。
4.古地図や旧地名の調査:古地図や旧地名を調べることで、その土地が過去にどのような利用をされていたかを知ることができます。例えば、かつて沼地や川だった場所は地盤が軟弱である可能性があります。
5.現地の観察:実際に土地を訪れて、地面の状態や周辺の環境を観察します。例えば、道路にひび割れがある場合や、周囲の建物が傾いている場合は、地盤が不安定である可能性があります
これらの方法を組み合わせて、土地地盤の良し悪しを総合的に判断することが重要です。
最後に
土地売買もその物件ごとにさまざまな問題がありますので、よりきめ細かな調査が必要になります。
信頼のできる業者に依頼をしての売買が不可欠です。弊社は全エージェントが宅地建物取引士ですので安心してご依頼をくださいませ。
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