所有者不明住戸が引き起こす深刻な問題とは? 高齢化するマンションの管理組合が今からできる対策を解説 | 仲介手数料無料のREDS

REDSエージェント、宅建士の藤ノ木裕です。今回は「所有者不明住戸」について解説したいと思います。

所有者不明住戸

(画像はイメージです)

所有者不明住戸とは

所有者不明住戸とは、マンションなどの区分所有建物において、所有者の所在が不明な状態の住戸を指します。

区分所有者が死亡し、相続人が「不明または所在不明」である場合や、相続登記が完了しておらず所有者が特定できない場合や、区分所有者に連絡が全く取れず所在が不明となっている「連絡不能」の場合などが挙げられます。

なぜ所有者不明住戸が発生するのか

なぜ所有者不明住戸が発生するのかについて考えてみましょう。所有者不明住戸が発生する原因はさまざまですが、主なものとして以下が挙げられます。

1.相続に関する知識不足や、相続人が遠方に住んでいるなど、さまざまな理由で相続登記が遅れる「相続問題」があります。

2.高齢の区分所有者が亡くなり、相続人となる子どもや親族がすでに亡くなっているなど、連絡が取れない「高齢化」があります。

3.マンションの売買契約時に、管理組合への所有者変更の手続きがなされず、所有者が不明になる「売買時の手続き不備」の場合があります。

所有者不明住戸の所有者の管理組合が直面する具体的な課題

所有者不明住戸は、管理組合にとって深刻な問題です。マンション全体の管理運営に大きな影響を与えかねません。

管理費・修繕積立金の滞納

所有者が不明なため、管理費や修繕積立金の徴収が困難になります。滞納額が増えることで、マンション全体の修繕や維持管理に支障をきたし、建物の老朽化を加速させる可能性があります。他の区分所有者の負担が増え、不満やトラブルが増える可能性もあります。

総会決議の阻害

総会決議には、全区分所有者の過半数の同意が必要となることが多く、所有者不明住戸の存在が、重要な決議を阻む要因となります。大規模修繕工事や建て替えなどの重要な決議ができなくなる可能性があります。

緊急時の対応が困難に

水漏れや火災などの緊急事態が発生した場合、所有者不明住戸への連絡が難しく、迅速な対応ができない可能性があります。連絡の遅延により、被害が拡大したり、他の住戸に影響を与えたりする可能性があります。

建物の管理不全に陥りイメージ悪化も課題

所有者不明住戸は居住者がいないため、定期的な点検や清掃が難しく、建物の状態が悪化する可能性があり、ゴミの不法投棄や害虫の発生などの問題も発生する「建物の管理の難しさ」の可能性があります。

長期にわたって所有者が不明な状態が続くと、先に挙げた隣接する住戸からの騒音や漏水に関するトラブルに加え、自治体からの指導や行政処分を受ける「法的な問題」に発展することも考えられます。

そのような管理不全に陥ると、マンション全体のイメージを悪化させ、売却価格が低下し賃貸が困難になるなどマンション全体の価値が低下するでしょう。

こうならないよう、管理組合が取るべき対策としてはまず、戸籍謄本取得や住民票確認、探偵への依頼など、あらゆる手段を講じて所有者の所在を特定する「所有者の捜索」や所有者不明住戸に対する対応を明確化することでしょう。

さらに規約を整備する「管理組合規約の見直し」や、総会で所有者不明住戸に対する対応策を決定する「総会での決定」、法的な問題に対応すること、複雑な問題については弁護士や不動産専門家などの専門家のアドバイスを受けることでしょう。

所有者不明住戸の具体的な解決事例

所有者不明住戸は、マンション管理組合にとって深刻な問題ですが、さまざまな解決策が模索されており、実際に解決につながったケースも数多く存在します。

まずは、所有者の戸籍謄本等を取得することで相続人や親族の情報を探します。「住民票を確認すること」で、転居先の情報が得られる可能性があります。「登記簿謄本や固定資産税の納税通知書」などを確認することで、所有者に関する手がかりが得られることもあるでしょう。

所有者に関する情報がインターネット上(SNSやインターネットの活用)に公開されている可能性もあります。

所有者不明の状態で放置されている不動産に対しては、「裁判所に管理人の選任」を申し立てることができます。管理人は、不動産の管理・保全を行うとともに、所有者の捜索を行います。連動して「管理組合の規約」を整備し、所有者不明住戸に対する対応を明確化し総会で、所有者不明住戸に対する対応策を決定します。

国や自治体の支援策としては、所有者不明土地対策の一環として一部の地域では所有者不明土地の解消に向けた支援策が実施され、「空き家対策の一環」として所有者不明住戸に対処する取り組みが行われているようです。

長年連絡が取れなかった相続人と連絡が取れ最終的に住戸を売却することができた事例や、管理人を選任し不動産の劣化を防ぎつつ所有者の捜索を継続した事例、自治体の支援を受け戸籍謄本などの資料を収集し所有者を特定した事例などがあり、問題解決に前進しています。

まとめ

とにかく所有者不明の状況に早く気づくことが重要であり、複数の方法を組み合わせ多角的なアプローチを図ることで、解決の可能性が高まります。弁護士や不動産鑑定士などの専門家のアドバイスを受けるといいでしょう。所有者の捜索には時間がかかる場合があるため、根気強く対応することが求められます。

今後の課題としては所有者不明住戸に関する「法制度の整備」が求められ、所有者不明住戸に関する情報を共有する「情報共有の強化」の仕組みの構築が重要です。そのためには住民一人ひとりが、所有者不明住戸問題に関心を持ち、「住民意識の向上」につなげることが大切かと思います。

 

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