借地権つき物件ってメリットあるの? 新法と旧法の違い、定期借地権も解説 | 仲介手数料無料のREDS

こんにちは。REDSエージェント、宅建士・宅建マイスターの菊池弘之です。今回は借地権のついた物件購入にあたってのチェックポイントをまとめてみたいと思います。

借地権

(写真はイメージです)

借地権物件のメリット

借地権物件のメリットを5つ紹介します。

初期費用が抑えられる

土地を購入するのに比べ、借地権で土地を借りる場合は初期費用が少なくて済みます。土地を購入するには多額の資金が必要ですが、借地であれば初期費用の負担が軽減されるため、他の資金を建物や事業に活用しやすくなります。

購入に比べて税金負担が軽減される

土地を所有すると、固定資産税や都市計画税などの税金が課されますが、借地の場合は借主に土地の所有権がないため、これらの税負担がかかりません。これにより、固定資産税負担が軽減され、毎年の固定資産税のコストが抑えられます。

長期にわたる安定した土地利用が可能

一般的に、借地契約は20〜50年など長期間で契約され、再契約も可能です。そのため、安定して土地を利用し続けることができます。事業用の借地などでは、長期的な事業計画が立てやすくなります。

相続・資産管理の簡便さ

土地の所有権を持たないため、相続時の資産評価が低く抑えられることがあります。また、土地の売買や相続にかかる手続きが発生しないため、資産管理も比較的容易です。

私のお客様でも、実際に相続税対策として借地権のアパートを購入された方がいらっしゃいました。投資用物件では、購入価格が抑えられるので、所有権の物件に比べて利回りが高くなるというのも特徴です。

立地の選択肢が広がる

土地を購入する場合、高額なエリアには手が届かないこともありますが、借地であれば手が届きやすくなるため、立地の選択肢が広がります。

都心では借地の物件も多くありますので、借地の物件に目を向けるだけで、一気に検討できる物件の幅が広がります。

借地権物件のデメリット

一方、借地権物件にはデメリットもあります。5つ紹介します。

地代の支払いが発生する

借地契約に基づき、毎月(または年単位で)地代を地主に支払う必要があります。地代は契約によって変動することもあり、経済状況や土地の評価額によって増額される可能性もあるため、費用が予測しづらくなります。

建物に制限がある

借地に建物を建てる際、建物の種類や構造、利用目的に関して地主の許可が必要です。また、借地契約の更新や建物の増改築を行う際にも、地主の同意を得る必要があり、自由に建物を設計・管理するのが難しくなる場合があります。

一般的には、非堅固の建物の建築のみを許可しているケースが多く、その場合は木造住宅の建築目的のみに限られます。

借地権の更新や譲渡の際に費用が発生する

借地権の更新時には更新料が必要になることがあり、地主との再契約や更新の際に契約料の負担が発生します。また、第三者への譲渡に際しても、譲渡承諾料もしくは名義書換料という名目で費用がかかります。これは相続税評価額をもとに一定の割合で計算しますが、その土地の賃貸借契約の内容によって金額はさまざまです。

資産価値が土地所有に比べて低い

借地権は土地所有権と比べて資産価値が低いため、担保価値も低くなり、金融機関からの融資が制限される場合があります。また、借地権を売却する際も、土地そのものを所有している場合より売却が難しくなることがあります。

旧法借地権と新法(借地借家法)との違いについて

借地権といっても2種類あり、初回の借地契約がいつ締結されたかどうかによって、旧法の借地権が適用になるか、新法(借地借家法)が適用になるかが決まってきます。以下、解説します。

旧法借地権とは

旧法借地権とは、1992年に施行された「借地借家法」以前の旧借地法に基づいて成立した借地権のことです。旧借地法は、地主よりも借地人(借主)の権利を強く保護する内容になっていたため、旧法借地権にはいくつかの特徴的なポイントがあります。

◆旧法借地権の特徴

1.契約期間が長い

旧法借地権では、契約期間は通常30年(事業用などの特別な場合は短期契約もありますが、基本は長期間)です。また、更新時には20年の更新が可能となり、さらにその後の更新も可能です。

2.契約更新が容易で、借地権の強い継続性がある

借地人には契約更新の権利が認められており、地主が更新を拒否するには正当な理由が必要です。そのため、ほとんどのケースで借地権は自動的に更新され、借地人は長期間にわたり土地を使用し続けられます。

3.建物のある限り継続できる

旧法借地権の契約更新には建物が存在することが条件とされており、建物が存続している限り契約の更新を拒むのは難しくなっています。このため、建物が老朽化しても、建て替えを行うことで長期間にわたり利用を継続することが可能です。

4.借地権の譲渡や相続が容易

旧法借地権は借地人の財産権として認められているため、第三者への譲渡や相続が可能です。地主の承諾があれば、借地権を第三者に売却することもでき、その際には譲渡承諾料が発生します。

5.借地権の存続が地主よりも優先される場合がある

旧借地法に基づく契約は、地主が変わった場合でも借地権が保護され、通常どおり存続します。そのため、新たに土地を購入した人も旧法借地権を尊重しなければなりません。

新法借地権とは

新法借地権とは、1992年に施行された「借地借家法」に基づく新しい借地権の総称で、借地借家法の改正によって旧法借地権よりも柔軟に運用できるようになっています。新法借地権には、一般的な「普通借地権」と、地主が土地を返してもらいやすくなる「定期借地権」が含まれます。

◆新法借地権の特徴

1.普通借地権

  •  旧法借地権と同様に、契約の更新が可能な借地権です。
  • 契約期間:最初の契約期間は30年以上。更新時は20年、それ以降は10年ごとに更新されます。
  • 更新の自由:借地人には契約の更新権が認められており、借地人が希望すれば土地を借り続けることができます。
  • 建物の再築:契約期間中に建物を建て替えることが可能です。建て替え後も、契約期間は一定の更新期間を持って継続されます。

2.定期借地権

  • 借地の期間満了後に契約更新をしない「定期借地権」が導入されました。これは、土地の使用期間をあらかじめ決めて、終了後には必ず土地を返却するものです。
  • 種類:
    ・一般定期借地権(契約期間50年以上、期間終了後は建物を撤去して返還)
    ・事業用定期借地権(契約期間10年以上50年未満、事業専用での利用)
    ・建物譲渡特約付借地権(契約期間30年以上、期間終了後に建物を地主に譲渡)
  • メリット(地主側):土地の返還が確実に得られるため、資産管理がしやすくなります。
  • メリット(借地人側):土地購入に比べて初期費用が抑えられ、事業計画や生活設計に沿った利用が可能です。

3.借地権の譲渡や相続が可能

  • 新法借地権は旧法借地権と同様に、借地人の財産権として認められています。第三者への譲渡や相続が可能で、地主の承諾を得ることで売買や相続の際の自由度が保たれています。

新法借地権のメリットとデメリット

新法借地権のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。

新法借地権のメリット

  • 柔軟性が向上:普通借地権と定期借地権の両方を選べるため、借地人と地主の双方が契約内容を目的に応じて調整できます。
  • 地主の権利保護:従来の旧法借地権に比べて、地主が土地を返還してもらいやすくなり、資産活用がしやすくなっています。
  • 用途に応じた契約の設定:特に定期借地権を活用すれば、商業施設や短期間の事業用地など、利用目的に応じた契約が可能です。

新法借地権のデメリット

  • 定期借地権では長期利用が難しい:定期借地権の場合、契約満了後に土地を返却するため、長期間にわたる使用が保証されません。
  • 建物の撤去義務:契約終了時に建物を取り壊して土地を返却しなければならないため、撤去費用がかかる場合があります。

新法借地権は、旧法借地権に比べて借地の利用方法が柔軟になり、地主にとっても借地人にとってもメリットがある契約形態です。特に、長期間の安定した借地を求める場合には「普通借地権」、一定の期間のみの利用を希望する場合には「定期借地権」といった使い分けができるため、双方のニーズに合った土地活用が可能になっています。

定期借地権とは

新法借地権の中でも、タワーマンションなどの大規模マンションに利用されることが多い「定期借地権」について解説していきます。

1992年の借地借家法で導入された借地権の一種で、契約期間が定められており、期間満了後は更新せずに土地を地主に返還することが基本とされています。これは、従来の借地権(旧法借地権)のように長期にわたる更新が認められる借地契約とは異なり、土地の使用期間をあらかじめ決めることで地主が土地を確実に返却してもらえる仕組みです。

定期借地権の種類と特徴

1.一般定期借地権

  • 契約期間:50年以上。
  • 更新:契約更新がなく、期間満了後は必ず土地を返還します。
  • 建物の処分:期間満了後、借地人は建物を撤去して土地を返還しますが、契約によっては地主が建物を買い取る特約をつけることも可能です。

2.事業用定期借地権

  • 契約期間:10年以上50年未満(事業目的の建物を建てるための借地)。
  • 用途:事業用の建物を建てるために土地を借りる契約で、個人の住居には使えません。
  • 更新:期間の更新がなく、事業終了後は建物を撤去して土地を返還します。
  • メリット:地主は確実に土地を返還してもらえるため、短期間の土地活用が可能です。

3.建物譲渡特約付借地権

  • 契約期間:30年以上。
  • 特約:契約終了後、借地人が建物を地主に譲渡することを条件に土地を返還します。建物を取り壊す必要がないため、双方にとってスムーズな契約終了が可能です。
  • 用途:主に事業や一定期間の住居目的で利用されます。

定期借地権のメリットとデメリット

●メリット(地主側)

  • 土地が確実に返還されるため、土地の資産管理がしやすい。
  • 定期的に土地を再活用できるため、資産運用の自由度が高まる。

●メリット(借地人側)

  • 土地の購入に比べて初期費用が抑えられる。
  • 契約期間がはっきりしているため、事業用地として計画が立てやすい。

●デメリット

  • 借地人は契約期間が満了すると土地を返還しなければならず、長期の土地使用が保証されない。
  • 居住用として利用する場合、住居を建てた後も土地が返却される前提での計画が必要なこと。

定期借地権が活用されるケース

定期借地権は、商業施設や事業用のオフィスビル、マンション開発などでよく利用されます。また、居住用としても、住宅ローンが取りやすくなりつつあるため、マンションなどの開発にも活用されています。

有名なマンションでいうと、

  • シティータワー品川
  • パークコート渋谷ザ・タワー
  • シエリアタワー中之島(大阪)

などがあり、優れた立地にもかかわらず定期借地権を利用しているため周辺相場より割安で、人気を博しています。

旧法と新法(借地借家法)の違い

1992年以降に施行された新しい借地借家法では、契約期間や契約更新に関する規定が変更され、特に「定期借地権」など、地主の立場がある程度保護されるようになっています。

そのため、新法の借地権は、旧法の借地権に比べて更新や契約内容が柔軟で、地主が土地を返してもらいやすくなっていますが、旧法借地権はそのままの規定が引き継がれ、更新や存続が保護されるケースが多いです。

まとめ

借地権の特徴を認識しておくことで、選択肢の幅が広がるかと思います。

地主が誰かによっても賃貸借契約の内容が大きく変わりますので、検討する際には不動産会社の担当者に詳しい説明を求めることが大切です。

 

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