皆様こんにちは。
首都圏一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント。【宅建士】【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)でございます。
先日2024年11月5日に、ビジネスを効率化する『不動産ID』について、「いよいよ来月試行がはじまる」との報道がありました。
これを機会に、日本での土地の所在の表現、『住所』の表し方について、イロハからおさらいしたうえで、これから利用が始まる『不動産ID』に迫ってみようと思います。
(画像はイメージです)
『不動産ID』って、なに?
『不動産ID』とは、「土地や建物など不動産ごとに17ケタの数字を割り振って住所を識別する方法」とのことで、ビジネスを効率化するための官民の取り組みです。
国土交通省が、民間企業や行政など300以上の社・団体が参加する協議会を昨年2023年に立ち上げており、それがいよいよ、社会実装にむけて動き出すそうなのです。
詳しくは、このブログの最後のほうで取り上げてみようと思います。
『住所』って?意外と不便?
不動産IDの前に、日本の「住所」の表現の仕方と、その問題点について、解説してみましょう。そもそも『不動産ID』って、まだ聞きなれない言葉ですね。新聞でも「きょうのことば」で解説をしています。
たとえば住所(その建物)をあらわすのに「1丁目2-3」や「一丁目2番3号」や「1-2-3」と、漢字「一、二、三」を使ったり、ローマ数字を使ったり、「2番」ではなく「2番地」を使ったり、さらには同じ数字でも、全角を使ったり、半角を使ったり。それをデータ処理の際に別の場所と認識してしまう可能性も否めません。
さらに、同じ場所(土地)を指すのに『地番』と『住居表示』という2つの表現方法があり、郵便の住所と登記上の地番で表記が異なることも情報共有の障害になっていたり、同じ場所なのに、異なるものとして認識されてしまう事もあったりします。
そのために起こっている「非効率」な状況を可決するための取り組みが『不動産ID』という仕組みです。
(以上、引用)
『地番』と『住居表示』について。不動産の『イ・ロ・ハ』のおさらい
不動産IDは、これからの取り組みですが、そのお話を進める前に、現在使われている日本の「住所」について、あらためておさらいしてみましょう。
日本の住所は、『地番』を使うエリアと『住居表示』を使うエリアがあります。不動産業界では当たり前の話なのですが、不動産を購入する際に、最初に戸惑うポイントとして、この『地番』と『住居表示』があります。
ちなみに、全国どこでも所有権が登記されている土地であれば必ず『地番』は存在していますが、その土地に『住居表示』がない場所は、いたるところに存在します。それが最初に混乱しやすいポイントになっています。
『地番』とは
『地番』は、土地の位置を特定するための番号です。これは土地の登記のために使用され、法務局が管理しており、主に不動産取引や土地所有権の確認に使用され、登記簿謄本に記載されます。
たとえば弊社、株式会社不動産流通システム【REDS】の新宿営業所が入っている「新宿ビルディング」について調べてみましょう。
このビルの「住所(住居表示)」は「新宿区西新宿1-8-1」です。
それに対して、この「新宿ビルディング」の敷地について不動産登記で使う所在の『地番』はどうなっているのか、調べてみましょう。
地番を確認するためには、法務局が発行している「地図」、これを一般の地図と区別するために「公図」と呼びますが、この「公図」を見て、その場所の『地番』を知ることができるのです。
公図「新宿区西新宿一丁目 8番7」
「新宿ビルディング」の「公図」で確認しますと、「新宿区西新宿一丁目8番7、8番8」になっております。
ちなみに『住居表示』の「西新宿1-8-1」とおなじ数字の地番「西新宿一丁目8番1」を探しますと、上記公図の青丸の場所、つまり「新宿郵便局」の東側の「大高ビル」の場所であり、「新宿ビルディング」とはまったく違った場所を指してしまいます。混乱しやすいですね。
『地番』は、権利が登記された「土地」ごとに番号を振る仕組みですので、土地を小分けに分割して、それぞれに権利を登記する「分筆(ぶんぴつ)」をおこなうと、あらたな番号『地番』が振られます(逆に複数に小分けされていた土地を、一つの大きな土地にまとめて登記することを『合筆(ごうひつ)』と呼び、『地番』はひとつになってしまいます)。
ちなみに土地の「筆(ふで)」というのは、不動産登記に関して、土地を区別するための基本単位を言います。具体的には、土地を1筆、2筆と数えるように、登記上で1つの土地として区別されている単位を「筆」と呼びます。
ある場所の近隣について、いろいろな場所で「分筆」されたりすると、位置関係がバラバラのところに飛び飛びにあらたな番号が追加されていきますので、場所と番号に一連性がなくなってしまい、住所から場所を特定するのに非常に苦労します。
このように『地番』は土地の区画ごとに付けられるもので、住所として利用するには不便な場合があります。そのため、日常生活での住所としては、別のシステムである『住居表示』が用いられるようになりました。
『住居表示』とは
『住居表示』は、上記で説明しました『地番』を利用した場合には場所の特定が困難で日常的な使いづらさを克服するために、住居をわかりやすくするために導入された制度で、1962年の住居表示法に基づいて設定されています。
この『住居表示』は自治体が管理しており、法務局が管理する地番とは別のシステムです。自治体によって「住居」ごとに、その地理的な位置関係に対して原則として整然と番地が振られていきますので、一般生活上における位置の特定に対して、非常に役立ちます。
この『住居表示』を行うことにより、建物の場所がわかりやすいため、郵便や宅配便、消防や救急といった公共サービスがスムーズに提供できるという利点があります。
『住居表示』が実施されるエリアでは、建物に「○○町1丁目1番1号」などのような形で表示されるようになり、自治体から下記のような住所のプレート(町名板と住居番号表示板)が発行されます。
しかし『住居表示』は、先に記載しておりますとおり、日本のすべてのエリアで実施されているというわけではありません。1962年に利用を開始して以降エリアごとに「このエリアは『住居表示』を実施しますよ!」とお知らせがあって順次実施していっているわけでして、まだまだ「未実施」のエリアが多く存在しています。
たとえば「東京都新宿区」では、区のホームページによりますと「面積比で76.60%、89町丁の町で住居表示を行っており、未実施の地域は、63町丁となります。」(2024年11月14日現在)とのことで、下記の地図で「黄色」のエリアは「住居表示 実施地区」で、「うす紫色」のエリアは「未実施地区」となります。
「新宿区」のように大都会でも、まだ未実施の地区があり、そのエリアでは「●丁目●番●号」という『住居表示』の利用ができておりません。
たとえば未実施地区にある「新宿区立鶴巻小学校」の住所は、GoogleMapで検索してみますと、「東京都新宿区早稲田鶴巻町140−140」となっており、『地番』をそのまま「住所」として利用していることがわかります。
さて、いよいよ『不動産ID』のおはなし。
そもそも『不動産ID』って、まだ聞きなれない言葉ですね。新聞でも「きょうのことば」で解説をしています。
2024年11月5日(火)日本経済新聞 朝刊「きょうのことば」
これまで説明してきましたように、同じ場所(土地)を指すのに『地番』と『住居表示』という2つの表現方法があり、それにより郵便の「住所」と登記上の『地番』とで表記が異なることがあることもわかりました。
その結果、情報共有の障害になっていたり、同じ場所なのに、異なるものとして認識されてしまったりすることもあります。
そこで国土交通省が、官民の関係者による協力を通して、土地や建物ごとに17ケタの識別番号を割り振って、住所を数字で表現することを目指したのが不動産IDです。
たとえば宅配業者が窓口で荷物を受けつけた際に、データベースを活用して記載された住所を不動産IDの番号に置き換えることで、その後は送付先に届けるまで住所を番号で管理することができるようになります。
データベースで住所と不動産IDの番号を突き合わせる時点で、まず住所が実在するかどうかが分かり、宅配業者の営業所間での確認作業を減らせます。それにより住所の誤読や送り先の建物の間違いなど誤配を少なくできる効果も見込め、今後、増える可能性がある外国人労働者にとっても、漢字やかなが交じった表記よりも数字だけのほうが理解しやすく、宅配や郵送の場面での手間や労力、人材やコストを省けるように期待されています。
不動産IDは、単に「住所」を「番号」にするだけではない!!
不動産IDの仕組みはさらに、物件の所在地、敷地の広さ、建物の構造、築年数などに加えて、登記情報、権利関係や過去の売買取引履歴、管理状況、法的制限、災害リスク情報など、物件全般に関するデータやさまざまな情報を紐づけ、デジタルプラットフォーム上で管理することを目指しているようです。
【第3回不動産IDルール検討会】不動産IDの中長期も含めた活用方法及びメリット(抜粋)
この不動産IDを利用することで、不動産取引の透明性や効率性が向上して、情報の継続性や信頼性が保たれるようになることも期待されています。
まとめ
この『不動産ID』が進んでいくことで、不動産流通の透明化も進んでいくことにより、不動産業界全体が『正直不動産』な業界になっていけるように見守っていきたいと思います。
それではまた、次回のブログをご期待くださいませ。
【REDS】宅建マイスター:堀 茂勝
<参考リンク・文献>
- 日本経済新聞 2024/11/5(火)朝刊『17桁のIDで住所識別 データ共有容易に、宅配効率よく 20自治体が来月試行』
- Yahooマップ『東京都新宿区西新宿1丁目8-1』
- 新宿区ホームページ『住居表示の各種プレートについて』
- 新宿区ホームページ『新宿区の住居表示実施状況』
- GoogleMap『新宿区立鶴巻小学校』
- 日本経済新聞 2024/11/5(火)朝刊『きょうのことば 不動産IDとは 住所の識別簡略化、DXの起点にも』
- 国土交通省『不動産ID』
- 国土交通省「不動産IDルール検討会」
- 国土交通省「不動産IDルール検討会:【第3回不動産IDルール検討会】(令和4年1月28日開催)資料4 不動産IDの中長期も含めた活用方法及びメリット」
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