高低差のある宅地で土砂災害を防ぐ擁壁について解説その2 | 仲介手数料無料のREDS

こんにちは。仲介手数料が必ず割引・最大無料の「不動産流通システム」、REDSエージェント、宅建士の戸村麻衣子です。

前回は高低差のある土地における擁壁について、「擁壁とは何か?」という基本的なところをご説明しました。

本日は擁壁のある宅地が「建築基準法を満たしているかどうか」「地盤調査の重要性」など、「不動産売買時の注意点」に視点を置いてご説明します。

擁壁

(写真はイメージです)

擁壁は強度が最重要

擁壁は、その土地や土地に建っている建物に被害が及ばないように作られていること、つまり、その建物の重さや自然災害などで流れてきた土砂に耐えられる「強度」が重要です。

とはいっても最近の自然災害は「想定外」のことも多く、必ずしも土砂などに耐えうるとはいえないのかもしれません。そこで、強度についての大きな目安としては「現行の建築基準法を満たしているかどうか」が重要となってきます。

(擁壁) 第142条 第百三十八条第一項に規定する工作物のうち同項第五号に掲げる擁壁(以下この条において単に「擁壁」という。)に関する法第八十八条第一項 において読み替えて準用する法第二十条第一項 の政令で定める技術的基準は、次に掲げる基準に適合する構造方法又はこれと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いることとする。

一 鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造とすること。
二 石造の擁壁にあつては、コンクリートを用いて裏込めし、石と石とを十分に結合すること。
三 擁壁の裏面の排水を良くするため、水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺に砂利その他これに類するものを詰めること。
四 次項において準用する規定(第七章の八(第百三十六条の六を除く。)の規定を除く。)に適合する構造方法を用いること。
五 その用いる構造方法が、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて確かめられる安全性を有すること。

出典:国土交通省 参考資料-1 関係法令

上記にあるように、擁壁を造る場合は必ず構造計算を行い、安全性を確認しなければなりません。また、建築確認申請も行いますので、近年新しく造られた擁壁については建築基準法上の安全性は確保されている、と考えてよろしいかと存じます。

しかし、古い擁壁の中には、現行の建築基準法を満たしていない「不適格擁壁」もあります。

自分自身の経験で恐縮ですが、不動産取引における擁壁で注意が必要だと感じることが多いのは、1~2m前後の擁壁です。過去の取引時には問題にならなかった場合でも、現行では「不適格」となっているものが多いように思います。

「水抜き穴」の「有・無」も確認が必要です。水抜き穴は排水状況が悪化し水圧が加わることを防ぐために設けられるものですが、古いものは設置されていないこともあります。

不適格擁壁の場合、擁壁工事の負担が発生します。購入前に擁壁の適合・不適合の確認が必要です。

擁壁適合の確認について

擁壁適合の確認は、「検査済証」の「有・無」で判断できます。擁壁の検査済証が交付されているか、不動産売買を取り扱っている会社(住宅会社や不動産仲介会社)にまずはお問い合せください。役所の建築指導課でお調べすることもできますが、一般の方が調べるのは勝手がわかっていないため難しいかもしれません。

新しいものはほぼ問題ないと思われますが、古い擁壁について、検査済証は基本「ないもの」と考えていただくのがよろしいです。

その場合の判断ですが、正式な判断はできないにしても以下を確認いただくと、おおまかに「擁壁工事が必要か否か」が分かります。また、比較的年代の新しいものでも下記は確認しておけば安全性が高まりますので、売買を考える物件に擁壁がある場合は参考になさってください。

  • 擁壁の表面に亀裂や変形(膨らんでいる)がないか
  • 傾いていないか
  • 擁壁の隙間が白くなっていないか
  • 擁壁に水抜き穴はあるか(3㎡につき1か所以上)
  • 擁壁の水抜き穴に土や草が詰まっていないか
  • 擁壁から水が出ていたり、湿ったりしていないか
  • 擁壁の表面にコケが生えていないか

擁壁の耐用年数は20~50年といわれます。条件によっても異なりますので築年数ではなく「現在の状態」を確認することが重要です。

擁壁を補修するというのは難しい場合もあり、「造り直し」になることも多いため、事前の確認を怠ると当初予定していなかった(場合によっては高額の)費用が発生する可能性があります。

まずは目に見える擁壁に問題がないか確認しましょう。

擁壁が建てられている地面の地盤は安全か

目に見える擁壁の確認が終わったら、次は擁壁が建てられている地面です。

地盤の弱い箇所では、擁壁自体に問題がなくても軟弱地盤の上に建っている擁壁が不同沈下(建物が不ぞろいに沈下を起こすこと。家全体が均等に沈下するのではなく、一方向に斜めに傾くような状態のこと)を起こしたり、一部だけ下がって周囲の擁壁とのズレが生じて不安定になったりしている場合もあります。特に以下のような土地は注意しましょう。

  • 海や河川・沼・田んぼを埋め立てて作った土地
  • 暗渠(あんきょ、水路が地下に埋設されたもの)や水路近くの土地
  • 盛り土された土地
  • 傾斜地

擁壁から十分な距離を取って建物を建設する場合はまだいいのですが、もし擁壁近くに建物を配置する必要がある場合は、建築する際の地盤調査時に、擁壁部分の地盤についても一緒に地盤調査することをお勧めします。

最後に

地球温暖化どころか〝地球沸騰化〟ともいわれる昨今、豪雨などで発生した土砂崩れがニュースになっているのを目にすることが多くなりました。擁壁は土砂崩れなどから建物を守るもののひとつです。

建物が守られれば、財産や日々の生活、そして命も守られる可能性が高くなります。それは、自宅のみでなく、近隣の方にも同様に影響します。

古くて劣化が進んでいる擁壁や現行の建築基準法を満たしていない擁壁だった場合、事故が起これば損害賠償などが発生する可能性があり、それを避けるためには補強工事などが必要となります。

売買を検討している土地に擁壁がある場合、その擁壁が現行の建築基準法を満たしているかどうかを確認しましょう。満たしていない場合は擁壁の補強や建て替えを視野に入れてご検討されることをお勧めします。

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