【REDS】不動産流通システム、宅建士で宅建マイスターの菅野です。
普通であれば不動産の価値を上げるはずの増改築、リフォームが、なぜかその不動産の価値を下げてしまっているという物件を、しばしば見かけます。
なぜ価値を下げてしまうのか、について考えてみたいと思います。
(写真はイメージです)
増改築が不動産の価値にマイナス要因となる理由
「この物件は増築されています」という文言が基本的にネガティブに感じる方は、不動産仲介業者か、その関係者だと思います。
「増築」というのは文字どおり、建物の面積を増やして利用できる床面積を広げる行為のことを指します。広くなれば建物の価値は上がる、と普通の人は思ってしまいます。
なぜ、増築が建物の価値を下げてしまうか、というと「遵法性」がなくなる場合が非常に多いからです。「遵法性」がない物件というのは、いわゆる「建築基準法違反」の物件ということです。
通常、建物を建てたり増築をしたりする場合、物件所在地の特定行政庁(都道府県市区町村など)にて「建築確認」を受けて工事を開始し、完成後に「完了検査」を受けて建築基準法に違反しない建物であるかを確認してもらいます。
この「建築確認」「完了検査」で遵法性のある建物である証明となる「確認済証」「検査済証」というものが発行され、お墨付きを得るわけです。しかし、これを行わずに増築する方が非常に多いのです。
違反と知らずに増築してしまう人も多い
建物を建てる場合、その土地に建てられる床面積の制限があります。「建ぺい率」「容積率」というものです。「建ぺい率」とは建築面積の制限、「容積率」とは延べ床面積の制限を指しますが、建築確認を受けずに増築した場合、その制限を超過してしまうことがしばしばあり、そうなると「建築基準法違反」となってしまいます。
また、増築と認識せずに行う増築があります。「バルコニーを広げる」「駐車場に屋根を付ける」「バルコニーに廂(ひさし)をつける」などです。バルコニーと駐車場の屋根を兼ねて、大きなウッドバルコニーをつけた家を見かけたことがありますが、こちらは大きく建ぺい率をオーバーしていました。
建築面積は建物の水平投影面積のことで、建ぺい率は建物の水平投影面積が建っている土地に占める割合のことをいいます。つまり、上空から建ぺい率60%の物件を見たとき、土地部分が4割見えていなければならないのですが、屋根のなかった駐車場をバルコニーで覆ってしまうことで、建築物が占める割合が大きくなって建ぺい率をオーバーしてしまったのです。
さらに、屋根裏をロフトとして利用したり、吹き抜け部分に床を張ったりすることも、床面積を増やす増改築といえます。屋根裏部屋は、建築確認で2階建てとしている建物を3階建てにしてしまう可能性があります。また、吹き抜けに床を作ることによって、容積率を超過してしまう場合が多くあります。いずれも建築基準法違反となる可能性の高い行為です。
違法の物件だと売れない理由
建築確認を受けずに無断で増改築を行う人は「自分の家なんだからどのようにしたって勝手だ」と思っている方が多いようです。しかし、それによる不利益は大きいと言えます。
その1つは、物件を売却するときに購入者が住宅ローンを使えない可能性です。
購入者が住宅ローンを使えないということは、現金でしか買えない、ということになります。現金一括で不動産を購入できる方は多くはありませんので、買える人が減ることになり、売却が難しくなります。
また、特定行政庁に無断で行った増改築をすると、増改築部分を建築基準法に沿った状態に戻すよう、是正措置や改善命令を受けることがあります。
以上が、増改築によって建物の価値を下げてしまう理由です。
リフォームで不動産の価値が下がる理由
リフォームで価値が下がる要因としては大きく2つ考えられます。
- 独りよがりで一般ウケしないリフォーム
- 場当たり的で一貫性のない内装
独りよがりで一般的でないリフォーム
独創的で使い勝手のあまりよくないリフォーム物件をたまに見かけますが、そういった物件はなかなか売れないようです。ごくたまに、ものすごく刺さる方がいるようですが、そういった購入検討者は、そう多くはありません。
例えば「お風呂の壁がガラスでできていて、リビングから素通し」とか、「壁のボードをすべて剥がして、コンクリート躯体がむき出し」とか、「壁をできるだけ減らして、ほぼワンルームに近い間取りにする」など、用途によってこういった物件を選択する方がいないわけではないものの、そういった特異な物件を好む買い手はなかなかいないのが現実です。
家にかっこよさを求める人はもちろんいらっしゃると思いますが、やはり人それぞれです。また機能性や清潔であること、プライバシーを守ることを条件とする購入検討者もいます。「人の好みは千差万別」とはいえ、ある程度、多くの人に好まれるリフォームを行った物件のほうが、それを求める買い手が多いのは事実です。
場当たり的に行い、一貫性のない内装
古くなってくると、設備のあちこちに不具合が出てきて、交換が必要となる場合があります。その際に、壊れた設備を場当たり的にひとつずつ交換していくと、色味などに一貫性がない内装となる場合があります。
例えば、フローリングの張り替えを行う場合、部分張り替えで周囲に近いものを選んだとしても、傷み具合や色合いの違いがあとから目立ってしまうことがあります。また、子供部屋の壁紙がキャラクターデザインのものだったり、建具やキッチンの扉の色が違っていたり等、せっかく修繕やリフォームをしていても「購入後にまたリフォームしないといけない」と購入検討者に思われてしまうのは、損なことです。
買い手がリフォーム込みで購入価格を検討することは必至で、大きな価格交渉をされたり、市場価格として割高ととらえられたりしてしまいます。リフォームや修繕でお金をかけても、それを使ってもらえないのはもったいないし、悲しいですよね。
まとめ
増改築やリフォームを行う場合、遵法性や一貫性、一般性に注意を払うことは、不動産の価値を考えるなかで非常に重要といえます。
「一生住むつもりだから」と自分の好き勝手に「建築基準法なんてどこ吹く風」なんて言いながら増改築やリフォームをした物件は、万が一売らないといけなくなったとき、安い価格でしか売れなくても仕方ない、と思っていただくしかありません。
買い手にとっても、増改築やリフォームの内容については注意を払う必要があり、住宅ローンが組みにくい増改築物件や一般的でないリフォームが施された物件は、よほど気に入った場合でなければ、手を出さない方が安全です。
遵法性については、REDSのエージェントがしっかり確認いたします。頼っていただけると安心安全かと思います。
増改築やリフォームを検討している方は、値段や自分の希望も重要ではありますが、信頼できる工務店やリフォーム業者に依頼することを、こころからお勧めいたします。
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