皆様こんにちは、【REDS】不動産流通システム、REDSリフォーム、宅建士・1級建築施工管理技士補・リフォームスタイリスト1級の木須陽子です。
前回は建築物石綿含有建材調査の難しさについてお話ししました。今回は石綿事前調査についてお話します。
石綿事前調査とは
解体・改修時の石綿事前調査とは、現地調査の前に調査対象がどのような建築物であるのかを、ひと通り把握するために設計図や仕様書などの設計図書(以下「設計図書等」という)の書面調査を行うことです。
1 建築一般
石綿合有建材の使用目的に関する建築知識は、石綿合有建材の見落とし防止、石綿合有建材の使用部位や同一建材の範囲の判断の際に非常に重要です。
ここでは、設計図から石綿含有建材の記載箇所を効率的に見つけるための石綿含有建材の2つの使用目的を解説します。
2 建築基準法の防火規制
建築基準法の防火規制は、主要構造部の制限、防火区画の設置、内装材料の制限、建物の外側(屋根、外壁等)に対する制限など、火災による建築物の倒壊や延焼を防止するための規制です。次に、それぞれの規制内容と使用された石綿含有建材を解説します。
本項においては、主として建築基準法におけるアスベストの使用禁止などが規定された2006年10月以前の規制内容について記述しております。
(1)主要構造部の制限
鉄骨耐火被覆は、主要構造部の制限に基づき施工されています。
①耐火構造の指定
建築基準法では、耐火建築物の主要部を耐火構造とすることを義務付けています。
耐火構造は、通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒装及び延焼を防止するために必要な構造です。鉄骨造の柱や梁(はり)を一定の厚さ以上の吹付け石綿で覆ったものは1956(昭和31)年頃から使われ始め、1964(昭和39)年に一般指定の耐火構造として指定されました。1987(昭和62)年に告示が改正され、吹付け石綿の耐火構造の指定は削除されています。
②主要構造部
主要構造部とは、壁、柱、床、梁(はり)、屋根、または階段を指し、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、附け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段、その他これらに類する建築物の部分を除きます(建築基準法第2条第5号)。
「構造上」とは、防火上の観点を意味し、構造耐力上重要でないもの(居室と避難施設たる廊下などとの区画を構成する間仕切壁など)も主要構造部となります。また、基礎は防火上の影響が少ないため、主要構造部には含まれません。
【主要構造部】
- 壁:構造上(注)重要でない間仕切壁を除く
- 柱:構造上重要でない間柱、附け柱を除く
- 床:構造上重要でない揚げ床、最下階の床、回り舞台の床を除く
- 梁(はり):構造上重要でない小ばりを除く
- 屋根:構造上重要でないひさしを除く
- 階段:構造上重要でない局部的な小階段、屋外階段を除く
(注)「主要構造部」と「構造耐力上主要な部分」の違い
「主要構造部」は、建築物の防火上の観点から定められていて、「壁」「柱」「床」「屋根」「階段」の部位は、建築物の耐火性能や避難時の安全確保、近隣への延焼及び近隣からの類焼を防ぐことを旨としています。
「構造耐力上主要な部分」は、建築物の力学的構造に関連する部分を定めています。「基礎、壁、柱、小屋組み、土台、斜材、床版、屋根版、横架材」構造躯体の要としての部位となります。
③耐火建築物としなければならない建築物
建築物の用途、規模、地域に応じて、主要構造部を耐火構造や準耐火構造(以下「耐火構造等)とすることが義務付けられており、以下の規制があります。
注)市街地における火災の危険を防ぐために、地方公共団体が都市計画において防火地域等を定めている。建築物の所在地と建築時期から、これらの地域を特定できる。各自治体はホームページで現況の都市計画図を公開している。なお、防火地域などの一定規模の建築物に対する規制については、条件に該当すれば、一戸建て住宅にも適用される。
特殊建築物の規模、階による規制(表参照)
用途 | 耐火建築物 | 耐火建築物または 準耐火建築物 |
|
---|---|---|---|
当該用途に供する階 | 当該用途の床面積 | 当該用途の床面積 | |
劇場、映画館、演芸場、観覧場、公室、集会場(注1) | 3階以上の階 | 客席の床面積200㎡以上 (屋外観覧席にあっては1,000㎡以上) |
一 |
病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿会、児童福祉施設など | 3階以上の階(注2) | 一 | 300㎡以上 (2階の部分に限り、かつ病院および診療所においては、2階に患者の収容施設がある場合に限る) |
学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場 | 3階以上の階 | 一 | 2000㎡以上 |
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラグ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売店舗(床面積10㎡を超えるもの) | 3階以上の階 | 3000㎡以上 | 500㎡以上 (2階の部分に限る) |
倉庫 | 一 | 200㎡以上 (3階部分に限る) |
1500㎡以上 |
自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ、テレビスタジオ | 3階以上の階 | 一 | 150㎡以上(注3) |
危険物の貯蔵場または処分場 (注4) |
一 | 一 | 建築基準法施行令第116条の数量を超える |
(注1)劇場、映画館または演芸場の用途に供するもので、主階が1階にないものは耐火建築物としなければならない。
(注2)地階を除く階数が3で、3階を下宿・共同住宅・寄宿舎の用途に供するもの(防火地域外に限る)については準耐火建築物(建築基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(2015(平成 27)年政令第11号)による改正前の建築基準法施行令第115条の2の2の基準に適合するものに限る)とすることができる。
(注3)建築基準法施行令第 109条の3第1号に掲げる技術的基準に適合するもの(同条第2号に掲げる技術的基準に適合するものを除く)を除く。
(注4)建築基準法別表第2(と)項第4号に規定する危険物(安全上及び防火上支障がないものとして政令で定めるものを除く)の貯蔵場または処理場の用途に供するもの。
<参考>簡易な構造の建築物(建築基準法施行令第 136条の9で指定する自動車車庫・スポーツの練習場など)で、耐火上必要な技術基準(建築基準法施行令第 136条の10)に適合するものは適応除外(耐火・準耐火建築物としなくて良い)。
次回は耐火建築物としなければならない建物の続きをお話しします。
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