こんにちは、REDSエージェント、宅建士の大西進(おおにし すすむ)です。私のブログをご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、住宅のご購入にあたり、皆さんが加入される火災保険の特約として加入する地震保険の損害認定について書きたいと思います。
地震保険の調査と基準
地震保険の調査や損害認定の基準についてのポイントは以下の3点です。
- 地震保険では鑑定人による全件立会調査が行われる。「罹災証明書(り災証明書)」交付のため自治体が行う調査とは、着目点や基準が異なる。
- 損壊、火災、液状化、津波それぞれについて損害認定の基準が設けられている。
- 能登半島地震では、保険金支払いの迅速化の取り組みとして共同調査が行われた。
2024年初めの能登半島地震では、支払い件数6万7000件超、610億円超の地震保険金が支払われています。2011年3月の東日本大震災を筆頭に、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災に次ぐ歴代第7位となる巨額の支払額であり、被害の深刻さを改めて感じずにはいられません(2024年3月8日現在)。
DX化が進む火災保険では、損害状況の写真をスマートフォンでアップロード、立会調査なしに即日で保険金が請求できるようにもなっています。
他方で地震保険では、原則として被害物件全件について鑑定人の立会調査が行われます。同時に今回は、保険金の支払いの迅速性をより高める損保会社各社による「共同調査」も実施されました。地震保険の損害認定について、以下で確認しましょう。
「罹災証明書(り災証明書)」と異なる独自の認定基準
ひとたび地震災害が起きると、広域にわたり数多の世帯が被害を受けることが少なくありません。地震保険制度では、被災者がいち早く生活再建に取り組めるように、迅速な保険金支払いが求められます。
そこで地震保険の全件立会調査では、火災保険と異なり軸組や柱、壁などの主要構造部の損害に着目し、受けた損害の大きさに応じて「全損・大半損・小半損・一部損」の4つの区分でざっくりとした保険金が支払われる仕組みが導入されています。
たとえば、揺れにより住宅が損壊して「主要構造部の損害が50%以上となった」あるいは「火災で建物の延べ床面積の70%以上が焼失したとき」は「全損」と認定され、地震保険金額と同額となる満額の保険金が支払われます(表1参照)。
木造住宅や一定の鉄骨造住宅などの津波および液状化の損害には別途、認定基準が設けられています。津波損害は浸水深(表2参照)、液状化は傾斜および沈下量(表3参照)で損害が認定されます。
これらは地震保険独自の認定基準で、自治体が罹災証明書(り災証明書)交付のために住宅を調査するときの基準とは、着目点が異なります。罹災証明書(り災証明書)で全壊と認定された住宅が、地震保険で必ずしも全損と認定されないのは、こうした理由からです。
共同調査による支払いの迅速化
保険金支払いの迅速性が確保されているとはいえ、広域にわたり甚大な被害が生じたときに全件立会調査を実施すれば、保険金の支払いにかなりの時間を要すると考えられます。そこで2011年の東日本大震災の際に初めて導入された「共同調査」による損害認定が今回再び実施されました。
共同調査では、損保会社の派遣要員で構成された共同調査団が、航空写真や衛星写真を用いて被災地域の状況を確認します。そのうえで、火災で焼失、または津波で流失が認められる地域については、個別ではなく地域単位で損害を認定します。
認定には2つの方式があります。ひとつめが「全損地域」です。建物がすべて焼失または流出している街区内の建物と家財は、立会調査不要ですべて全損とします。
もうひとつが「一部全損地域」です。一部の建物を残し、建物が流失または焼失した街区内にあり、自治体発行の罹災証明書(り災証明書)で全壊とされる建物は、立会調査不要で建物・家財とも全損とします。航空写真で建物全壊が確認できれば、罹災証明書(り災証明書)も不要です。
今回、石川県珠洲市・輪島市の一部地域が全損地域、石川県珠洲市・羽咋郡・鳳珠郡および輪島市の一部地域が一部全損地域に認定されました。また、深刻な建物倒壊被害が発生している珠洲市・輪島市・穴水町・能登町の立ち入りが困難な一部地域では、今回初めて地域単位ではなく一軒単位で倒壊建物の損害を認定する共同調査も行われており、この手法で「全損建物」「全損の可能性が高い建物」が認定されました。
地震保険約款にある「時価」の意味とは
最後に触れておきたいのが、保険金の認定に関してときおり耳にする「時価」という用語についての誤解です。地震保険約款には「保険金は時価が限度」などの記載がありますが、これを「古い建物ほど保険金があまり受け取れないのでは」と考える方が少なくないようです。
一般に「時価」とは、老朽化を加味した現状相当の金額を指します。時間経過に応じた価値減少を反映した価額であり、不動産取引上の住宅価格は数十年で価値がなくなるともいわれます。
これに対して、火災保険および地震保険上の「時価」の意味は異なります。火災保険は通常、住宅を再建できる水準の「再調達価額」で契約します。古くても居住実態があり、適切な管理状態の住宅であれば、通常は同水準の新築住宅価格の50%が火災保険上の「時価」の下限となります。
たとえば、現時点で新築価格3,000万円の住宅と同じ部材、同規模・同水準の中古住宅の火災保険上の「時価」は最低でも1,500万円となります。地震保険金額の上限は火災保険金額の50%なので、火災保険金額3,000万円の住宅には1,500万円まで設定できます。
つまり、古い建物でも時価100%となる1,500万円まで地震保険に加入でき、全損の場合には結果として「時価を上限」に保険金が支払われるので、契約した地震保険金額ベースで保険金が支払われると考えて差し支えありません。
最後に
もちろん、何よりも大切なのは「保険加入すること」ではなく「命を守ること」です。あくまで保険は「災害後」の経済的リスクを補うものにすぎません。しかしながら、地震保険は被災者が生活を立て直していくうえで大いに役立ちます。その意味で、常に地震のリスクにさらされている日本で暮らす私たちにとって、地震保険の必要性は非常に高いといえるのではないでしょうか。
以前のブログにも書きましたが、地震はいつ、どこで、どんなタイミングで起こるかわかりません。いざというときの一瞬の行動が生死を分けます。あらかじめ、家や外出時、職場などシーン別での避難方法を知っておくことで緊急時でも心に余裕をもって避難できます。このページをご覧いただき、ご自身がどれだけ避難場所や避難方法を理解しているか確認していただけましたら幸いです。
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