皆様こんにちは、不動産流通システム、REDSリフォーム、宅建士・1級建築施工管理技士補・リフォームスタイリスト1級の木須陽子です。
石綿(アスベスト)のことをシリーズで取り上げています。
前回は建築物石綿含有建材調査の役割についてお話ししました。今回は建築物石綿含有建材調査の難しさについて解説します。
建築物石綿総含有建材調査はどこが難しいか
建物の石綿含有建材調査が困難な理由は、主に以下の5つです。
- 石綿含有建材の種類、商品が非常に多いこと
- 建築物の多様性と複雑さ
- 試料採取の難しさ
- 分析の難しさ
- 開査の誤りが許容されにくいこと
以下、それぞれ解説します。
石綿含有建材の種類、商品が非常に多いこと
石綿含有建材の基礎情報として国土交通省と経済産業省による石綿含有建材データベースに42種類、2126の製品が掲載されています。接着剤、塗材、パテなどは掲載されていないため、非常に多いことがわかります。
建築物の多様性と複雑さ
建築物は設計者がひとつひとつ設計しており、すべての建築物は異なります。構造と規模によって調査のポイントが異なるわけです。超高層のSRC造から木造戸建住宅まで、調査対象が広く、構造・材料・設備・意匠などについて基本的な幅広い知識が求められますし、増改築や部分改修によって、複雑化します。
試料採取の難しさ
過去に不用意な採取によって石綿を飛散させてしまった事例がありました(毎日新聞2016年11月19日)。採取は、石綿の飛散を起こすことを前提として、湿潤化、養生、吸引などによって飛散を最小にし、採取後は清掃によって石綿粉じんを除去し、飛散防止のために補修する必要があります。
対象によって使用する工具が異なり、飛散防止だけでなく効率も考慮する必要があります。調査者と立会者の防護も必要です。
分析の難しさ
石綿含有の有無の分析は、分析者が目で見て判定するために個人差があり、正確性確保に向けた熱練を要します。
意図的に石綿を添加した石綿含有建材の分析は、通常それほど難しくはないのですが、多層の試料の一部に含有している場合や、意図的ではなく不純物として混入している場合の分析は難しいことがあります。分析を外部に依頼する調査者は、分析結果を確認、精査しなければなりません。
調査の誤りが許容されにくいこと
調査漏れなどによって石綿含有建材を見落としてしまった場合は、その後の工事によって石綿が飛散してしまうという深刻な結果を起こす恐れがあります。
当然のことながらこれは許容されにくく、また逆の場合もあります。存在しない石綿含有建材を存在すると報告してしまった場合には、発注者に全く不要な高額の対策費用を負担させてしまう結果になります。
これも許容されにくいものです。
石綿含有建材調査者の心構え
建築物における石綿含有建材の使用状況調査業務を担い、調査報告を取りまとめる調査者には、次のような事項が要求されます。
- 建築物の意匠・構造・設備にわたる知識を有すること
- 建築物に使用されている建材と石綿含有建材に関する知識を有すること
- 建築物の施工手順や方法に関する知識を有すること
- 建築物の設計図書や施工図などを解析し、必要な情報を抽出できること
- 建築物に使用されている建材の採取を的確に実施すること
- 石綿分析に関する知識を有し結果を評価すること
- 石綿含有建材の維持管理に関する知識を有すること
- 石綿含有建材の除去に関する知識を有すること
- 石綿のリスクを理解し調査者の業務に反映できること
- 中立性を保ち正確な報告を行うこと
次回は図面の読み方と調査についてお話しします。
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