皆様こんにちは! 不動産流通システム【REDS】エージェント、宅建士の大石純也です。
皆様突然ですが、心理的瑕疵と聞いて何を思い浮かべますでしょうか? 過去にその部屋で亡くなった方がいらっしゃる、いわゆる「事故物件」を想像される方が多いかと思います。
これは半分正解ですが、答えとしては足りません。今回は「心理的瑕疵」について解説します。
事故物件も嫌悪施設も心理的瑕疵の一部
事故物件はあくまで心理的瑕疵の一部であって、ほかにもさまざまなものがあります。先日私のブログで書かせていただいた「嫌悪施設」、実はこれも心理的瑕疵にあたります。
葬儀場や高圧線の近くなど、何か直接的な害があるわけではないものの「なんとなく嫌だ」と感じることがざっくり言うと心理的瑕疵になります。
きちんと説明すると下記のような内容になります。
“不動産の取引に当たって、借主・買主に心理的な抵抗が生じる恐れのあることがらをいう。心理的瑕疵とされているのは、自殺・他殺・事故死・孤独死などがあったこと、近くに墓地や嫌悪・迷惑施設が立地していること、近隣に指定暴力団構成員等が居住していることなどである。
物件の物理的、機能的な瑕疵ではないが、物件の評価に影響することがあるため、知っていながらその事実を説明しない場合には契約不適合責任を問われることがある。もっとも、何が心理的瑕疵に当たるかについての明確な基準はない。
なお、不動産の取引や取引の代理・仲介に当たって、取引対象の不動産において過去に人の死が生じた場合に宅地建物取引業者がとるべき対応を示した指針(「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」2021年)が公表されている。”
(アットホームより抜粋)
何が心理的瑕疵に当たるか明確な基準なし
大事なことは「何が心理的瑕疵に当たるかについての明確な基準はない」ということです。人によってマイナスと感じるものが違うので、明確に定義できないのです。
心理的瑕疵と感じる人がいる事柄の具体例として、事故物件や隣に暴力団事務所にあるなどわかりやすいものもあれば、他にも下記のようなものもあります。
- お隣さんが実はゴミ屋敷だった
- 近くに精神疾患を持っている方が住んでおり毎晩のように徘徊している
- マンションで、過去に数回の空き巣被害にあっている部屋がある
- マンションの下の階の住人が音に敏感な人で文句をよく言ってくる
- マンションの隣の住人が毎晩のように騒いでいる
これは私がぱっと思いついたものですが、まだまだほかにもあると思います。「これは人によっては嫌なのかな?」というものは、おおむね心理的瑕疵に当たるといっても過言ではないといえます。
心理的瑕疵のある物件を回避する方法
そして正直なところ、これらをすべて確認するのは我々不動産業者でも現実的ではありません。もちろんご契約ごとに毎回各不動産の調査を行い、いいことも悪いこともすべてご説明できるよう最大限努めております。
心理的瑕疵のある物件を回避する方法としては、主に以下のようなものが考えられます。
- 中古住宅を買う場合は、現所有者(売主)の方に詳しく聞く
- 新築住宅であれば建築業者が周辺の人にあいさつ回りをしている場合があるので、具合を聞いてみる
- 実際にご自身で住宅周辺を歩いてみる
また不動産業者に頼んで、マンションであれば上下左右階、戸建てであれば隣地の方に訪ねて話を聞いてみるのもいいでしょう。実際に私も行ったことがあります。
不動産会社の対応範囲を定めた国のガイドライン
国土交通省が出している「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」の中に下記のような記載があります。
〇宅地建物取引業者が媒介を行う場合、売主・貸主に対し、過去に生じた人の死について、告知書等に記載を求めることで、通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする。
〇取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい。
〇賃貸借取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生から概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよい。
〇人の死の発生から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある。
※国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」より抜粋
そうです、実は我々宅建業者は売主・貸主から告知事項がないかを確認をすれば心理的瑕疵の調査としてはそれで済んでしまうのです。
さらにいうと賃貸借取引であれば自然死などであれば告知義務がなく、それ以外でも3年経過した後は原則として告げなくてもよいとなっております。さらにさらに、「賃貸借・売買取引の対象不動産の隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した自然死等以外の死・特殊清掃等が行われた場合」も告知義務はないと記載があります。
あくまでガイドラインにはなるので法的な拘束力はないのですが、少し物足りない感じもしてしまいますよね。
最後に
極論を言ってしまうと、東京に関しては第二次世界大戦の際の東京大空襲で一度、焼け野原になっています。そこまで考えるとかなりの広範囲の住宅が事故物件となってしまうことでしょう。
結論としましては、「極端に気にしないこと」といえるかもしれません。もちろん自分で呑み込めない部分などは精査する必要がありますが、あれもこれもと必要以上に気にしすぎてしまうと、どんどん選択肢がなくなってしまいます。
「この嫌悪施設にはどんなデメリットがあるの?」などご質問いただければお答えさせていただきます。引き続き、不動産流通システム【REDS】の大石をよろしくお願いいたします。
コメント