建築物石綿含有建材調査の役割と調査者育成制度 | 仲介手数料無料のREDS

皆様こんにちは、不動産流通システム、REDSリフォーム、宅建士・1級建築施工管理技士補・リフォームスタイリスト1級の木須陽子です。

前回は建物の解体や改修の際に、石綿を含む建材などの有無を調査する「建築物石綿含有建材調査」の流れについてお話ししました。今回は建築物石綿含有建材調査の役割について解説します。

建築物石綿含有建材調査

建築物石綿含有建材調査にかかわる人や組織とは

建築物石綿含有建材調査には、以下の人たちがかかわります。

  • 建築物の所有者
  • 建築物の利用者(テナント・入居者)
  • 建築物の管理者(所有者から委託を受けた者を含む)
  • 石綿含有分析調査機関・採取作業業者
  • 建築物石綿含有建材調査者
  • 解体・改修工事などの設計者・施工業者
  • 地方公共団体などの行政機関

調査業務の大切さを認識し、お互いが協力を惜しまず、調査結果を中立かつ公正に評価することが重要です。

2種類の建築物石綿含有建材調査を比較

建築物石綿含有建材調査には2種類あります。それは以下の2つです。

1.維持管理のための調査

維持管理のための調査とは、現在使用中で今後も使用する建築物の石綿含有建材を調査し、石綿のリスクを最小にするために行います。これは主にレベル1、2を対象とした調査で、石綿合有建材の所在だけではなく、劣化の判断や今後の使用での維持管理のためのアドバイスを報告します。

2.解体・改修等工事の事前調査

解体・改修等工事の事前調査とは、石綿含有建材の除去という飛散のおそれが高くなる場面で、石綿含有建材の所在を事前に把握し、飛散防止対策を実施するための調査です。

■2つの石綿含有建材調査の比較

調査種別  維持管理のための調査  解体・改後等工事の事前調査 
関係法令  建築基準法  大気汚染防止法、労働安全衛生法 
調査者  建築物石綿含有建材調査者(法的な資格要件はない)  建築物石綿含有建材調査者(法的な資格要件がある。2023年10月施行) 
目的  適正な維持管理による建築物利用者等のばく露防止  大気汚染の防止、労働者の健康障害の防止、廃棄物の適正な処理 
誷査対象  全館全部屋  工事対象となる箇所 
対象建材  基本的に吹付け材および保温材・断熱材・耐火被覆材(レベル1、2)  すべての建材(レベル1~3、建築用仕上塗材) 
調査手法  書面調査、現地調査、分析調査  書面調査、現地調査、分析調査 
取り外し・破壊の有り無し  復元できる範囲での取り外し調査、基本的に非破壊調査  取り外し、破壊を伴う調査 
危険区域の調査  原則として調査しない  危険を取り除いて調査する 
主な装備  記録、防護、レベル1、2の採取のための装備  記録、防護、レベル1~3の採取、取り外し、破壊のための装備 
劣化度の判定  実施する  実施しない 
報告書  維持管理のアドバイスを含む石綿含有建材の有無の調査結果報告書  事前調查結果報告書 

建築物石綿含有建材調査者の育成制度について

国土交通省は2013(平成25)年、建築物石綿含有建材調査者の育成を開始しました。今後、石綿含有建材が使用されている建築物の解体工事の増加が見込まれる状況を踏まえると、石綿含有建材調査に携わる者の育成を一体的に行うことが、効果的かつ効率的であると判断したためです。

2018(平成30)年10月、現行の講習制度に関する告示を廃止。新制度では、旧制度の実地研修のある調査者を「特定建築物石綿含有建材調査者」とし、新たに実地研修のない「建築物石綿含有建材調査者」として、2つの調査者を育成する制度となりました。

さらに 2020(令和2)年には、告示が改正され、調査者は「特定建築物石綿含有建材調査者」と「一般建築物石綿含有建材調査者」に加えて一戸建て建築物のみを調査することができる「一戸建て等石綿含有建材調査者」が創設され、3つの資格制度となりました。

2020(令和2)年の石綿障害予防規則と大気汚染防止法の改正により、建築物の解体における事前調査について、建築物石綿含有建材調査者による調査が義務付けられ、2023(令和5)年から施行されました。調査者の役割は重要性を増し、責任も大きくなっています。

建築物石綿含有建材調査者の役割

建築物石綿含有建材調査者が調査を誤れば、建物利用者や工事に従事する作業者、工事の周辺住民の石綿ばく露につながります。過去のばく露による石綿の被害は深刻でした。調査者による的確な調査によって被害を最小にすることが求められています。

先に挙げた「解体・改修等工事の事前調査」は、今後需要の増加が予想されます。調査者は、これらの関係法令だけでなく所管する厚生労働省と環境省の通知、通達、マニュアルなどを遵守して事前調査を行うことが求められます。

次回は建築建物石綿含有建材調査の難しさについてお話しします。

 

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