擁壁の安全性が不動産売買にいかに影響するか解説 | 仲介手数料無料のREDS

REDSエージェント、宅建士・宅建マイスターの森山賢治です。

高低差のある土地で、側面の土が崩れるのを防ぐために設置される壁状の構造物を擁壁といいます。この擁壁がある不動産の売買において、最も重要なのは安全性です。擁壁の安全性が不動産売買にどう影響するのか解説します。

擁壁

擁壁の安全性に関するポイント

擁壁の安全性が不動産売買に与える影響について、主なポイントは以下の4点です。

1.安全な擁壁は売却への影響はない

国が定めた基準に従って設計・施工された擁壁は、大地震や豪雨で崩壊することはまずありません。安全性が確認された擁壁がある家や土地は、擁壁自体がマイナス要因になることはなく、相場どおりの価格で売却できます。

2.安全性が確認できない擁壁は売却価格に影響する

擁壁の安全性が確認できない場合、災害時の不安が払拭できないため、売却価格に影響します。特に、2000年以前に建てられた家の擁壁は、安全性が確認できないケースが多く存在しています。

3.擁壁の下の敷地でも売却に影響がある

他人地の擁壁であっても、売却に大きく影響を及ぼすことがあります。擁壁の高さによって建て替えの可能性が異なります。

4.検査済証だけでは安心ができないケースがある

検査済証は、検査をした時点の適合性を証明したものであり、売却時の適合性を保証するものではありません。経年劣化や法改正による影響も考慮する必要があります。

擁壁に関連するする法律・法令

擁壁に関連する法律・法令には以下の3つがあります。

1.宅地造成等規制法

宅地造成等規制法は、盛土や擁壁などの土木工事に伴う崩壊や土砂の流出による災害を防止するための規制を行うものです。特定の高さを超える擁壁については、許可や確認申請が必要とされています。

2.建築基準法

建築基準法においても、擁壁に関する規定があり、擁壁の設置や安全性について、法律で定められています。

3.地方公共団体の条例

地域ごとに「がけ条例」と呼ばれる条例が定められています。これにより、擁壁の安全性や設置条件が具体的に規定されています。

宅地造成規制法とは

宅地造成は、建物を建てたり駐車場を設置したりするために森林などを地均し(じならし)することです。すでに建物が建てられている土地や、駐車場や資材置き場が設置されている土地を再び地均しすることでもあります。

崖崩れや土砂災害が心配される区域内で乱暴な宅地造成が行われれば、大雨の際に土砂災害が発生し、多くの人命が失われるおそれがあります。このため、宅地造成等規制法では、崖崩れや土砂災害が心配される区域を「宅地造成工事規制区域」と呼び、同区域内で一定の範囲を超える宅地造成を行う際は、都道府県知事などの許可が必要であると規定しています。

許可を必要とする宅地造成は、切土(斜面を削る工事)により、高さが2mを超える崖(角度が30度を超える斜面)ができる宅地造成のほか、盛土(土を盛る工事)により、高さが1mを超える崖(角度が30度を超える斜面)ができる宅地造成、切土と盛土を同時に行うことにより、高さが2mを超える崖(角度が30度を超える斜面)ができる宅地造成があります。また、切土や盛土の有無にかかわらず、500㎡を超える宅地造成を行う場合もあります。

適切な工事が行われた場合、都道府県知事などが現場を検査し、検査済証が発行されます。適切に行われなかった場合は許可が取り消され、工事のやり直しを請求されます。

建築基準法における擁壁に関する規定とは

建築基準法において、擁壁は「法19条4項:敷地の安全に関する規定」と「法40条:地方公共団体の条例による制限の附加(通称:がけ条例)」で規定されています。

擁壁の高さが2mを超える場合、確認申請が必要です(施行令138条)。高さが2m以下の擁壁は、がけ条例も適用されず、建築基準法の具体的な規制はかかりません。

構造の規定としては、鉄筋コンクリート造、石造、その他これらに類する腐食しない材料を用いなければなりません。石造の擁壁については、コンクリートを用いて裏込めし、石と石とを十分に結合すること、擁壁の裏面の排水を良くするため、水抜き穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜き穴の周辺に砂利などを詰めることが決められています。

擁壁のある不動産を売買する際の注意点

擁壁のある不動産を売買する場合、以下6つの注意点を考慮することが重要です。

1.擁壁の安全性を確認する

擁壁が安全であることを確認しましょう。国の基準を遵守して設計・施工された擁壁は、大地震や豪雨で崩壊することはほとんどありません。擁壁の検査済証を確認し、安全性が確認されたものであることを確認してください。

2.擁壁の高さに注意

高さが2mを超える擁壁は、開発許可や宅造許可、建築確認申請が必要です。これらの手続きを遵守しましょう。高さが1mを超える擁壁を築造する場合も、同様に申請が必要です。

3.擁壁の所有者になるリスクを理解する

擁壁の所有者になると、擁壁の安全性を維持する責任が発生します。擁壁の瑕疵担保責任を理解しましょう。

4.地質を考慮する

地盤の安息角(土を積み上げたときに崩れることなく安定を保つ斜面の最大角度)内に基礎を設けることで、擁壁が決壊しても建物への影響を最小限に抑えられます。地質によって建て替えの可能性が異なることを理解してください。

5.検査済証だけでなく実際の状態も確認する

検査済証だけでなく、実際の擁壁の状態も確認しましょう。経年劣化や欠陥がないかをチェックします。

6.売却価格に影響を与える可能性を理解する

安全性が確認できない擁壁は、売却価格に影響を与える可能性があります。購入者は工事費用を差し引いた金額での購入を希望することが考えられます。安全性につきましては専門家に相談し、慎重に擁壁の状態を確認し、売買を進めることが重要になります。

 

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