石綿(アスベスト)のハザードを把握しリスク対策するための建築物石綿含有建材調査 | 仲介手数料無料のREDS

皆様こんにちは、不動産流通システム、REDSリフォーム、宅建士・1級建築施工管理技士補・リフォームスタイリスト1級の木須陽子です。

前回はさまざまなアスベスト(石綿)のばく露環境と疾患の関係についてお話しました。今回は建築物石綿含有建材調査の重要性と調査の流れについてお話します。

建築物石綿含有建材調査

建築物石綿含有建材調査の意味

これまで見てきたように、石綿は大きな被害を発生させてきた発がん性物質であり、現在でも大量に残されています。残された石綿含有建材は、維持管理上、または除去や解体の過程で、リスクを評価し、評価結果に応じて適切に取り扱い、建築物の解体・改修時には適切に飛散防止措置を講じなければなりません。

建築物はそれぞれ石綿含有建材の種類が異なり、ハザードを把握し、リスク対策をするために調査が必要です。石綿のリスクは、健康リスクだけにとどまらず、評価損リスクも存在します。

2010(平成22)年4月からは、国内の企業会計に資産除去債務の考え方が導入され、有価証券の発行者は原則として、建築物に石綿含有建材が存在するか否かについて調査した上で資産除去債務を合理的に見積もり、除去に必要となる費用を資産除去債務(負債)として計上、これに対応する除去費用を有形固定資産に計上する会計処理を行うことが求められるようになりました。

国内企業が会計ルールをめぐる海外からの要請に応えていくためにも、建築物における石綿の使用実態の正確な調査は、重要性を増しています。

リスクとハザードとは?

さまざまな場面で「リスク」という言葉が使用されていますが、一般に労働安全衛生の分野では、リスクとはハザード(危険有害の源)にそれが現実の危害をおよぼす可能性(確率)をかけ合わせたものとされます。

石綿のリスクは、〈石綿(ハザード)×ばく露(呼吸によって吸い込むこと)〉です。石綿は存在するだけではリスクは発生しませんが、力が加わり飛散し、ばく露が起きたときにリスクが発生します。成形板のように石綿繊維が固定されていればリスクは発生しませんが、吹付け石綿が劣化している空間に人がいれば、ばく露のおそれがあり、リスクが発生するということになります。

建築物石綿含有建材調査の概要

調査の流れ

1.依頼

事前調査・相談

調査実施計画(調査目的確認・竣工の範囲の確認・調査範囲の計画)
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計画承認・契約
  ↓

2.書面調査(目視調査のための準備)

図面等調査(設計図・竣工図・改修図・対策工事記録)
  ↓
発注者ヒアリング(竣工・改修履歴・利用状況・対策工事記録)
  ↓
書面調査整理(建物概要・使用された材料・竣工部位・石綿と疑わしい部材のリストアップ)
  ↓
データーベース等照合(石綿含有データベース・メーカー・業界団体HP)
  ↓
石綿含有のありなし仮判定(含有材・無含有材・不明建材)
  ↓
書面調査整理(部屋・竪穴区画ごとの仕様整理)
  ↓
目視調査準備(建物調査計画 手順・用具・要員等)
  ↓

3.目視調査

外観観察(基本情報確認・構造仕上材・周辺建物)
  ↓
屋上・外構確認(仕上・防水処理・煙突・設備機器・配管ダクト)
  ↓
内部レイアウト確認(書面調査結果との照合(各部屋の用途等・すぐ見える内装材・見えない壁天井裏隠蔽部)
  ↓
各部屋調査(過去の改修痕・竪穴区画・層間・設備機器各部屋ごとの野帳スケッチや記録写真、ワークシート)
  ↓
現物確認(製品の表示、各種資料との確認、メーカー証明)※含有建材とみなして判定も可
  ↓
分析用試料採取(代表する検体・分析法に則した採取)
  ↓
分析(分析業者へ依頼)
  ↓
石綿含有のありなし(結果の確認分析結果から石綿含有のありなしの判定使用箇所特定)
  ↓
報告書作成(調査目的・範囲・総括表・詳細表・分析結果等)
  ↓
調査報告 調査結果を発注者へ説明

調査の解説

建築物調査では、まず建築物の所有者や建物管理を所有者より受託している業者などから竣工年、改修履歴などの情報を入手します。

次いで設計図や竣工図などの設計図書類の調査(以下「書面調査」)を実施し、現地調査時の確認ポイントなどを洗い出す作業を実施します。これらの書面調査の結果などを踏まえて現地調査を実施します。

実際の建物調査から分析による判断が必要な箇所を抽出した上で、的確に使用されている材料を代表する分析用試料を採取し、分析機関に依頼して分析します。

最後に、書面調査、現地調査、分析結果などを合わせて、建物調査報告書を作成。図面上では石綿含有建材が使われているように記載がある場合であっても、実際には使用した材料が同等品扱いで他の建材に変更され、石綿含有建材を使用せずに施工されていたり、改修などの際にすでに撤去済みであったりすることもありますので、書面調査、現地調査を踏まえて、石綿含有建材の疑いがあるものが存在しなかった場合は、使用箇所がない旨の建物調査報告書を作成し、依頼者に提出します。

一方、図面などの設計図書類が保存されていない場合や、所有者が変更されて調査の端緒となる情報源が少ない場合の調査作業には簡易の図面作成が伴うこともあります。

次回は建築建物石綿含有建材調査についてお話します。

 

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