皆様こんにちは、【REDS】不動産流通システムの木須陽子です。今回は建築物の要求性能のお話の続きです。
(写真はイメージです)
建築物の要求性能
断熱・結露防止を目的とした使用
外気に面する屋根や壁を断熱処理することで、室内の空調負荷を低減できます。屋根スラブ(屋根を構成する構造床のこと)下や北側の壁、ピロティの天井スラブ下に、断熱目的で吹付け石綿を施工する例が多く、建築物の形状がセットバックしている場合は、その屋根スラブ下に断熱目的で吹付け石綿が施工されている場合があります。その他、折板屋根にも断熱、結露防止の目的で石綿含有屋根用断熱材が使用されています。
断熱(結露防止)性能が求められる部屋(部位)は以下のとおりです。
- 屋根スラブ下(最上階の部屋の天井裏)
- 北側の外壁の中空部(すべての外壁面の場合もある)
- ピロティや軒先などの上部の、外気に面するスラブ下(ピロティや軒先の天井裏)
設計図書記載箇所は以下のとおりです。
- 仕上げ表
- 矩計図(断面詳細図)
- 部分詳細図
- 天井伏図、他
断熱(排ガス)を目的とした使用
コンクリートで囲われた煙突は、ボイラーの排ガスによるコンクリートへの悪影響を防止する目的で、内側を断熱材でライニングしています。石綿含有煙突断熱材は昭和35(1960)年ごろから使われ始め、それ以前は耐火レンガが使用されています。
断熱(排ガス)性能が求められる部屋(部位)は以下のとおりです。
- 煙道(ボイラーや発電機を設置する部屋から外気に排出する屋上まで)
- 煙突単独の場合もある
設計図書記載箇所は以下のとおりです。
- 仕上げ表
- 矩計図(断面詳細図)
- 部分詳細図(配筋詳細図)
- 特記仕様書、他
保温を目的とした使用
機械室のヘッダー・ポンプなどの機器、プラントや建築物の設備配管には、保温、断熱、結露・凍結防止が必要になります。
石綿含有保湿材は、特に配管のエルボやチーズといった曲がりや配管付属品周りで多く使用されています(直結部分に使われている場合もある)。
保温性能が決められる部屋(部位)は以下のとおりです。
- 古い建築物の機械室のヘッダー・ポンプなどの機器
- 配管類のエルボ部分
設計図記載箇所は以下の通りです
- 空調、衛生設備区の仕様書
- 設備図(機器表)
- 設備図(部分詳細図)
調湿を目的とした使用
銀行の金庫や書類保管庫などの紙を保管する部屋の壁・天井に、湿度調整の目的で吹付け石綿(商品名不明)が施工されている場合があります。
調湿性能が求められる部屋(部位)は以下のとおりです。
- 書類保管庫
- カルテ室
- 金庫室
設計図書記載箇所は以下のとおりです。
- 仕上げ表
- 矩計図(断面詳細図)
- 部分詳細図
意匠(見た目)を目的とした使用
意匠(見た目)と吸音を兼ねて石綿含有吹付けバーミキュライトや石綿含有吹付けパーライトが仕上げ材に使用されています。特殊な例として、ポーラス(多孔質)な質感を出す目的でクリソタイル吹付け仕上げや、深みのある青色を出すためにクロシドライト吹付け仕上げなどの使用例もあります。
意匠(見た目)が求められる使用(部位)は以下のとおり。
- 共同住宅の食堂・居間
- 階段室上段裏は仕上げ材・吸音材として使用
- 特殊例:ロビー天井・宴会場天井
- 内装(天井、壁、床)
- 外装(外壁、屋根)
設計図書記載箇所は以下のとおり。
- 仕上げ表
- 矩計図(断面詳細図)
- 部分詳細図
建築設備と防火材料
建築基準法上では、建築設備を「建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙もしくは汚物処理の設備または煙突、昇降機もしくは避雷針」と定義しています。
電気設備 (受変電、予備電源、幹線、照明器具、警報設備、避雷針など)
ケーブルが防火区画を貫通する部分は隙間を不燃材料で埋める必要があり、けい酸カルシウム板第2種や耐熱シール材を使用することが多く、また地中埋設電線管に石綿セメント円筒が使用されている場合があります。
給排水設備(給水、給湯、排水通気、衛生器具、グリーストラップ、給水タンク、ガス、浄化槽)
給排水設備では、耐火性能が必要な排水管に耐火二層管や、耐久性が必要なパッキンやガスケット、地中埋設給水管などに石綿含有建材が使用されています。
ボイラー本体の断熱材や冷温水ヘッダー、配管エルボの保護材のほか、ボイラーの壁や天井の仕上げ材として吹付け石綿が使われた事例もあります。
空調設備(暖房、冷房、換気、冷却塔)
ホテルのように部屋数が多く、個別制御が望まれる場合に用いられる水方式の空開方式(ファンコイルコニット)では、循環供給する冷温水用の配管に保温・結露防止を目的とした石綿含有保温材が使われている可能性があります。
耐火目的で吹付けられていた外壁の吹付け石綿に吸音効果も期待できます。また、空調設備のダクトの接続部分のパッキンにも石綿含有のものが使用されています。
昇降機(エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機)
鉄骨造の耐火被覆は、エレベーターシャフト(昇降路)にも施工されており、湿式工法で施工されたケースが多くなっています。堅穴区画の隙間を不燃材料で塞ぐ処理も行われています。昇降機には、エレベーター、エスカレーターの他、厨房や図書館などで、物品を運搬する小荷物専用昇降機も含まれます。
次回は石綿含有建材についてお話しします。
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