税務調査とは、納税者が申告した内容が正確であるかを確認するために行われます。通常は税務署から事前に連絡が来て、調査実施日を調整します。しかし「現金商売」に該当する飲食業や小売業などの場合、事前通知をせず、抜き打ちで調査を行うことも少なくありません。
なぜなら、現金取引は履歴が残りにくいため、不正な売上除外や帳簿の改ざんが行われるリスクが高いとされるからです。そのため、税務署は現場で現金が正しく計上されているか確認する必要があるのです。
調査官は特に、売上を抜いていないかと疑って調査します。帳簿の内容だけでなく、仕入れの状況や従業員の勤務状況などから申告している売上の数字が正しいかをチェックしていきます。不正が発覚すれば、7年間にさかのぼる調査や最も重い制裁である重加算税が課せられる可能性があります。調査が来る前に今一度、申告している売上の数字と帳簿の数字が合っているか見直すことが求められます。
(写真はイメージです)
現金商売の抜き打ち調査に備えるポイント
「現金商売」とは、飲食業や小売業のように、商品やサービスを提供した対価として、顧客から直接現金を受け取って取引することを指します。現金商売は履歴が残りづらく帳簿の改ざんも容易にできるため、税務調査の対象になりやすいといわれています。
税務調査が実施されることになったら、どのような点に気をつけたらよいのでしょうか。
現金商売の税務調査は、調査官が事前通知を行うことなく、抜き打ちで店舗を訪れることがあります。
一般的には営業時間外に調査を受けることになりますが、その多くが任意調査なので、どうしても都合が悪ければ、調査官と相談したうえで調査の実施を延期してもらうことも可能です。しかし、調査官は現場で現金の動きを確認する必要があるため、基本的には調査を受け入れることが求められます。
調査官の訪問を受けたら、事業者は調査官に対して所属の税務署や氏名の確認や身分証明書の提示を求めてしっかりチェックしたうえで、店舗内に入ってもらいます。調査には事業者の許可が必要になるため、事業者は必ず立ち会う必要があります。また、その際には顧問税理士にも連絡して、立ち会ってもらうのが望ましいでしょう。調査は税理士が到着するまで待ってもらいます。
現金実査の重要性と適正管理
調査で必ず行われる「現金実査」では、レジロールや領収書の控え、売上伝票などの記録と、実際にレジや金庫に保管されている現金残高が一致しているかが精査されます。不一致が見つかると、不正を疑われる可能性が高くなります。
大切なのは、日頃から適切な現金管理を徹底することです。帳簿や伝票と現金残高に差が生じないようにしましょう。差が生じている日数が多ければ多いほど、調査官に疑われることになります。
特に現金商売では、伝票の書き損じや、帳簿の書き忘れなどが起きがちです。忙しくて手が回らず、現金を受け取ったものの、レジに打ち込むのが後回しになってしまうケースなどもありえます。意図せず売上をごまかしてしまうことにもなりかねないので、現金を受け取ったら、すぐにレジに打ち込んだり、伝票に記入したりするなどして、その都度、売上を記録するようにしましょう。
その日の営業が終了したら、現金残高と帳簿残高を突き合わせて、差額が出た場合は、その原因を突き止める必要があります。その日の現金売上は毎日、口座に入金すると同時に、現金出納帳などに記入し、記録として残しておきましょう。
現金に関してはもちろんですが、ほかにも在庫や仕入れ、経費の計上なども細かく調査されます。特に個人商店では、個人的な支払いをレジに入っているお金で済ませてしまうなど、事業とプライベートの支出があいまいになりがちです。顧問税理士などにも相談しながら、いつ税務調査が行われても問題のないよう、すべてにおいて適正な現金管理を行うことが大切です。
税務調査をスムーズに終わらせるために
調査官に脱税を疑われてしまうと、細かい部分まで入念に調べられますが、適正に現金が管理できていれば、税務調査は比較的スムーズに終了します。不正の疑いを持たれないよう、日々の記録を正確に行い、税務調査が行われる際にも冷静かつ適切に対応しましょう。
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