菅野です。
読売新聞オンラインの埼玉県版で以下のような記事がありました。
記事の冒頭で
高齢者や障害者、生活困窮者などの入居を拒まない「セーフティネット住宅」が県内でなかなか増えない。「住宅弱者」の救済を目指して昨年10月に制度化されたが、不動産オーナーらへの周知不足などもあり、県内の登録物件は半年以上が経過した段階で8戸にとどまっている。
とあります。
「セーフティネット住宅」というのは、高齢者、低額所得者、子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅のことで、昨年10月25日から施行されたいわゆる「住宅セーフティネット法」により定められた制度により、データベース登録が可能となり入居者が確保しやすくなるとの触れ込みで行われている政策です。
記事では
物件所有者や不動産管理業者らに制度が知られていないことが、登録が伸び悩む一因と考えられるという。家主にとっては、物件を登録すれば広く情報提供してもらえるため、空き家・空き室に入居してくれる借り手を探しやすいメリットがある。県は今後、制度の趣旨や利点を周知していく方針で、家主らに情報を届けるため、業界団体を通じた啓発を検討しているという。
とありますが実際はどうでしょうか。
おそらく制度を知っていようがいまいが、登録は進まないだろうと思われます。
というのも、まず大家さんの考え方として、リスクの高い入居者はできるだけ避けたいという心理が強いことが言えます。私も賃貸営業を経験しておりますが、生活保護受給者や高齢者を受け入れる大家さんというのは本当に少なかった、という印象です。思わぬトラブルで大変な思いをするくらいなら、空室の方がよいと考える大家さんは、僕ら不動産業者が思うよりかなり多いです。
また、逆に賃貸管理業者からすれば、断らない大家さんの物件というのは、最後の切り札になります。わざわざ他の業者にまで紹介させたくはないのです。実際のところ、断らない大家さんの物件というのは空室率が低く、わざわざ新しいデータベースで賃借人を募集するほど空いていないのです。
以前にこんなブログを書いています。
さらに言えば、なぜ「レインズ」があるのにわざわざ新しいデータベースを作る必要があるのか?ということです。
(と言っても、レインズで「東京都」でセーフティネット住宅を検索すると5件しか登録がありませんでしたが)
また記事では
インターネットへの物件情報掲載だけでは「メリットが感じられない」という家主の声もあるという。ただ、これまでも高齢者らの入居を断らなかった家主はいたことから、県は「それらの物件が登録されるだけでも有意義」(担当者)との考え
とありましたが、こういう「登録されたので良かった、良かった」的な考え方では全く制度は広まらないし、肝心の高齢者・生活困窮者へ住宅を供給するという法の趣旨にもそぐわないと思います。
そもそも高齢者向けの住宅という意味であれば「サ高住」とかぶるし、家賃を払わなくなる可能性の高い生活困窮者の住宅の確保を民間へ投げるのは資本主義の世の中ではどだい無理というもので、民間を活用するというのであれば民間の貸家貸室を公が借り上げ(サブリースし)て低所得者に貸し出せばよいのです。
以上から、私は「セーフティネット住宅」という施策は全く無意味で、「国として対策をやってます」とただ表明しているだけの無為姑息、その場しのぎの政策でしかないと言い切ってしまいます。申し訳ありません。
データベースの作成なんて税金の無駄使いで、そのお金で少しでも国や地方自治体が民間貸家貸室を借り上げ、住宅に困っている人に供給するべきです。そのほうが間違いなく問題解決に近づけると私は考えます。この方法のほうが空家の有効活用にもなり、市場へマネーを供給できて景気も上がり一石二鳥だと思いますよ!
以上、本日も私のブログをご覧いただき、有難うございました!
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