【仲介手数料最大無料】不動産流通システムREDS宅建士/CFP/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認不動産コンサルティングマスターの堤 延歳(つつみ のぶとし)です。社会人スタートは教育業界で約10年。その後、不動産業界での門を叩いてからは今年で18年目となりました。
2021年7月2日夜から東海・関東の太平洋側で記録的な大雨が降り、静岡県熱海市で大規模な土石流が発生しました。多くの家屋が流され、現場では行方不明者の捜索活動が続けられています。被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
この熱海で起こってしまった伊豆山土砂災害を見て、これから不動産を購入しようとされている方にぜひ知っておいてもらいたいこと、それをテーマにしてみたいと率直に思いました。
テーマは【自然災害から命を守れ!歴史から学べ!】です。
今回はREDS不動産エージェントとして1歩踏み込んだ災害リスクの考え方や調べ方などをお伝えしたいと思います。ブログなので都合4回に分けて書きたいと思います。今回は第1回目です。
第1回(7月9日投稿)
土砂災害リスク!歴史から学べ!
第2回(7月16日投稿予定)
ハザードマップ、国土地理院地図から災害リスクを読み解く方法
第3回(7月23日投稿予定)
水害リスクの高い土地とは?洪水から命を守れ!
第4回(7月30日投稿予定)
地震で大きな被害を受けやすい土地や建物とは?
早速、本題にいきます。
【土砂災害リスク!歴史から学べ!】
まず熱海で起こったいわゆる土砂災害ですが、土砂災害を含め地震・津波・洪水・台風・火山等で起こる自然災害は同じ場所で起こることが多く、その土地の歴史を知ることが非常に大事となります。
ハザードマップは各市町村から配布されておりますので一度は目を通したことがあると思います。ハザードマップとはある災害が発生したときに危険と思われる場所や災害時の避難場所をまとめたもので、災害の種類別に「洪水」「内水」「高潮」「津波」「土砂災害」「火山」などのハザードマップがあります。
ただしこのハザードマップだけではその土地の歴史までは知ることができません。
そこで自分の住んでいる土地が昔はどういうところだったのか?それを調べる方法がいくつかありますので紹介してみたいと思います。
① 昔から住んでいる人に昔はどういう土地だったのかを聞いてみる。
やはり昔からその土地に住んでいる人に聞くのが一番早くて確実です。不動産調査でも近隣へのヒアリング調査はよく行います。ただ話好きな方に遭遇すると1時間以上立ち話をすることも・・・何度かあります。
② 国土地理院のホームページから見ることができる古地図や航空写真を検索してみる。
場所によっては明治時代のものも調べることができます。ちなみに自宅付近の地図を検索してみたところ大正10年に大日本帝國陸地測量部が作成した古地図が閲覧できました。大日本帝國陸地測量部は国土地理院の前身となる組織です。リンク先も貼りましたので活用してみてください。
③ ネット検索が苦手な方は最寄りの図書館で古地図を閲覧してみる。
最寄りの図書館に電話をして「○○市○○町の古地図はありますか」と確認してみてください。大体、備え付けられております。
④ 役所に備え付けられている昔の航空写真を閲覧してみる。
固定資産の実態調査のため3年に1回、航空写真を撮影している市町村が多いです。私が住んでいる横浜市ですと昭和22年の航空写真も閲覧できます。
⑤グーグルマップで過去の航空写真を検索してみる。
これは結構実務で使っております。よくお客様から昔は何が建っていたの?どういう土地だったの?と聞かれることもありますのでその時は30~60年くらい前の航空写真で確認しております。リンク先も貼っておきます。
⑥ 自分の住んでいる地名から推測してみる。
色々書きたいのですが特定は良くないので控えておきます。ただ新興住宅地に多い「◯◯ヶ丘」「◯◯台」といった地名についてはイメージを良くするために従来の地名が上書きされている可能性もありますので調べてみる価値はあると思います。
⑦ 法務局で「登記事項証明書」を取得してみる。
登記事項証明書(登記簿謄本)は法務局に行けば誰でも取得できます。登記事項証明書には土地の用途を分類した「地目」という欄があります。建築物の建築に伴い「宅地」に地目変更されますので家が建っている場合、ほとんどが「宅地」と記載されていると思います。
一方、家が建つ前は「山林」「田」「畑」「雑種地」などと記載されていることが多いです。この地目には合計23種類もあり、ほかには「学校用地」「塩田」「鉄道用地」「牧場」「原野」「墓」「池沼」「境内地」「用悪水路」「堤」「ため池」「保安林」「公衆用道路」「公園」「井溝」「運河用地」「水道用地」「鉱泉地」があります。
宅地になってからある程度の年月が経っていればそれほど心配する必要はないのかもしれませんが、昔の地目が池沼(沼地)、ため池などの場合には、地盤が弱い可能性を十分に考える必要があると思います。
⑧ 法務局で「閉鎖謄本」と「旧土地台帳」を取得してみる(不動産業者レベルです)。
閉鎖謄本をさかのぼって調べることで、おおむね昭和40年代以降の土地の地目の変遷が分かり、さらに旧土地台帳をさかのぼって調べることで、明治22年頃の地目まで分かることになります。土地台帳とは、もともとは明治時代の地租(土地の税金)課税のための台帳でしたので明治時代に遡って調べることができます。その土地台帳のことを法務局では旧土地台帳と呼んでおります。
旧土地台帳には「市街宅地」「大蔵省用地」「官有地」「野地」「軌道用地」「水面埋立地」「土揚敷」「稲干場」など現在では使われていない地目もありますが、ブログで書いて良いのかどうかためらうような地目もありますのでご興味がある方はぜひ調べてみてください。
ここまで色々と調査方法を書いてきましたが、自然災害から身を守るために「古い地図や航空写真を活用すること」は特に大事です。まずはご自宅や故郷のことなどを調べてみてはいかがでしょうか?
古地図から先人が名付けた災害地名を読み解き、それに該当する危険な地形でないかどうか、一度は航空写真などで確認してみることをおすすめいたします。
【熱海・伊豆山エリアの土砂災害について】
そして熱海で起こってしまった土砂災害ですが、この土砂災害にはがけ崩れ・地すべり・土石流などがあり、熱海の土砂災害は土石流と見られます。土石流は「山津波」とも呼ばれ、極めて危険な災害です。その土砂災害にともなう斜面崩壊の形態は次の2種類があります。
① 表層崩壊
表層崩壊は厚さでいうと0.5mから2.0m程度の表層土が滑落する比較的規模の小さい斜面崩壊です。
② 深層崩壊(熱海の土砂災害のケース)
深層崩壊はすべり面が深度で発生するため、表層土だけでなく深層の地盤までもが崩壊するという大規模な斜面崩壊です。崩壊した土や岩盤が高速で移動するため土石流や天然ダムを形成することがあります。
最近のニュースでは熱海の土砂災害の原因が大規模盛土にあるのでは?とよく報道されております。もちろん原因究明は人命救助後に行うものなのでだいぶ先の話になるとは思いますが、自分が住んでいる場所が大規模盛土がされて造成している場所なのかどうかを確認する手段が存在いたします。
それが「大規模盛土造成地マップ」の閲覧です。1741の市町村で大規模盛土造成地マップを作成しております。
大規模盛土造成地には、盛土面積3000㎡以上の【谷埋め型】、もしくは角度20度以上かつ盛土高さ5m以上の【腹付け型】の2種類があります。
もちろん大規模盛土造成地の位置を示すものであって、そのことがただちに危険な造成地であることを示すものでありません!
熱海市の大規模盛土造成地マップ(熱海市ホームページより)
赤い部分が大規模盛土造成地ですが、土砂災害発生場所(伊豆山エリア)とほぼ一致しているように見えます。
必ずしも【盛土=危険】とはなりませんが注意喚起情報として気になるエリアについては調べてみる価値は十分あると思います。
自主避難の判断について
最後に、土砂災害や洪水災害からの自主避難の判断に役立つサイトのご紹介です。
気象庁が公表している「キキクル(土砂災害・浸水・洪水警報の危険度分布)」です。常時10分毎に情報を更新しており、どこで危険度が高まっているかを5段階表示で把握することができます。
こちらのサイトもぜひ参考にしてみてください。
土砂災害キキクル
浸水キキクル
洪水キキクル
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