不動産流通システムの渡部です。
不動産会社に洪水・水害などのハザードマップの説明が義務付けられましたが、ハザードマップの存在への理解が進んでいるのか、物件を購入される方も事前にハザードマップを調べる方が増えてきた印象です。
とても好ましいことだと思っています。
ハザードマップの内容は変更されることもありますし、地図上で「色付け」がされていない場所でも水害リスクがないことを意味するわけではありません。【過信】は禁物ですが、有益な情報ですので情報が広く共有されることは大変良いことだと思います。
さてニュース記事を眺めているとここ数日は火災保険料の「値上げ」のニュースが目につきます。
その中でも以下のような記事が示唆的で印象に残りました。
(火災保険料、市区町村別に 水害リスクを反映-損保各社)
金融庁の有識者懇談会で報告書案がまとめられたということなので、数年後には「一律」で実現する可能性が高そうです。
「市区町村ごと」というのはかなり大きな分類ですね。
同じ市区町村であっても川沿いの場所と高台の場所では水害のリスクは全く異なるのですが、詳細にリスクを判別するのは技術的にも実務的にも政治的にもいろいろ難しいことなのだと推測します。
すでに損保会社個々でより詳細なリスクを反映した保険商品を開発していますが(例えば楽天損保 https://www.rakuten-sonpo.co.jp/family/tabid/989/Default.aspx )、保険商品の特性上、リスクを保険料に反映させるのは自然なことで今後もこうした流れは変わることはなさそうです。
地域ごとに保険料に差をつける前に、今年の10月頃からすべての火災保険料の値上げが決まったようです。
(損保大手各社、10月から火災保険料11~13%値上げへ…00年以降最大上げ幅)
損害保険会社はここ10年程増え続ける自然災害に対して保険料支払いが増えて火災保険事業の赤字が続いています。
内容を見ると「火災」事故などについての保険料支出は「安定」していてそれほど変化がないのですが、「自然災害」、特に「水害」についての保険料の支払いが増えているようです。
損害保険料算出機構が定める「参考純率」(各保険会社の保険料算出の基礎となるデータ)は、
2018年5月 +5.5%
2019年10月 +4.9%
2021年5月 +10.9%
とほぼ毎年のように引き上げられています(今回の保険料の値上げは2021年5月の参考純率改定を受けてのものです)。火災保険事業単体で見れば「破綻」しているようなものでこのまま現状を維持するわけにはいかなかったというところなのだと思います。
これだけひどい赤字続きですと「リスクが低い地域=値下げ」とはならず、「リスクが高い地域=値上げ」になる可能性があるでしょうか。より細分化されて地域ごとのリスクの大小が保険料に反映されるようになると立地の市場価値にも現状よりも影響が出てくることになりそうです。
不動産を購入する方はより慎重にハザードマップと向き合ったほうがよいかもしれませんね。
売却する方はご自身の所有地にどのようなリスク評価が公的になされているか、一度向き合ってみることをお勧めします。客観的な事実を知らなければ的確な対策もできません。
毎年のように値上げさる火災保険料からはいろいろなことを考えさせられますね。
今年も大きな災害が予想されます。
事前にできる対策はなるべくしておきたいと思います。
それではまた。
渡部
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