REDSエージェント、宅建士の島崎正輝です。
不動産売買の現場では、最近インスペクションという言葉をよく聞きます。インスペクションとは「中古住宅売買の際に行う住宅診断」です。物件引渡し後のトラブルを予防して、安全な取引を望む方には重要な情報といえるでしょう。インスペクションのメリットや、依頼するときのポイントについて考察します。
インスペクションとは?
インスペクションとは、調査や点検などの意味で、中古住宅の売買契約前に劣化や欠陥を調べる検査のことです。修理が必要な時期や、かかる費用のアドバイスも行われます。インスペクションをするには資格が必要です。または建築士などの専門家が行います。
インスペクションの目的
中古住宅の売買で、仮に建物の欠陥に気付かずに中古住宅を売買してしまうと、引き渡した後に買主とのトラブルになってしまいます。売買の前にインスペクションを行っておくと、建物の専門家の客観的な診断のもとで、建物のコンディションを理解してから売り出すことができます。インスペクションは家を売却する売主側に限らず、買主側からも依頼できます。
インスペクションの所用時間
インスペクションでは屋根、外壁、内壁、排水管、給湯管などの状態を目視でチェックし、さらに修繕工事が必要となる箇所があれば、実際にかかる概算費用や実施する時期までアドバイスをしてくれます。インスペクションは売買契約の前に行うのが一般的です。所要時間は一戸建てだと2~5時間程度、マンションだと1.5~2.5時間程度がひとつの目安です。
インスペクションの検査項目
検査項目は会社によって多少違いますが、主に以下の箇所を確認します。
物件の種類 | 構造耐力上主要な部分 | 雨水の侵入を防止する部分 |
---|---|---|
戸建て | 基礎、壁、梁、柱、小屋組、床、土台など | 屋根、壁、開口部、天井など |
マンション | 基礎、基礎杭、壁、床など | 屋根、壁、開口部、配水管など |
また、家の傾きや建物内部の鉄筋の状態などを見る場合、計測機器を使って精度の高い調査を行うこともあります。このような調査の場合は、基本料金以外にオプション料金がかかることが一般的です。
インスペクションは法改正により高まる重要性
中古住宅市場におけるインスペクションの重要性はますます高まっています。2018年4月に、宅地建物取引業法の改正により、不動産売買時の「重要事項説明」において不動産会社による「インスペクションについての説明」や、「調査結果の報告」などが改正により義務化されました(インスペクションの実施は義務化されておりません)。
また、2020年4月に民法改正があり、これまでやや曖昧だった中古住宅の売買に関するルールがはっきりと明確化されました。それに伴い、欠陥や不具合を気付かずに売買した中古住宅に関して売主側にかかる責任がさらに重くなっています。インスペクションにより、「気づかなかった」ということを防止することができるでしょう。
売主がインスペクションを行うメリット
売主側がインスペクションを行うメリットとしては物件を早く、高く売れる可能性が高まることです。売却する住宅を「インスペクション済」物件として広告で売りに出せば、購入する側も「購入後に揉めることは少ないだろう」と思ってくれるからです。
インスペクションを実施していない物件と「差別化」ができて、いい買主が見つかりやすくなるともいえるでしょう。インスペクション実施によってより最適な修理を行うことができていると、売却金額もアップできる可能性もあります。引渡し後に買主から身に覚えのない修理費を請求されたり、クレームを言われたりなどのトラブルも予防できるでしょう。
買主のインスペクションを行うメリット
買主が購入予定の物件についてインスペクションを実施することのメリットとして、購入後の修繕費用負担の見込みを予測できることでしょう。このほか、インスペクション済みの物件を購入したという安心感もあるでしょう。インスペクターによる検査で建物の状態が明確に分かるため、インスペクションを実施していない物件と比べると、不具合の有無や不具合内容などがあらかじめ把握できた状態で購入できたことになります。
また、修理が必要な箇所、今の建物の劣化状況が事前に分かるので、購入後の維持費用やリフォーム費用などが予測できることも挙げられるでしょう。購入したい物件の売主がインスペクションを実施していない場合は、買主側でインスペクションの実施を検討するのがいいと思われます。
インスペクションの概算費用
インスペクションの金額は請負業者によってさまざまですが、相場は戸建ての場合、5万~10万円程度(機械を使った検査など詳しいオプションを実施する場合は10万円以上)、マンションの場合は4万~5万円程度となります。
ただし、この金額は基本料金の価格であり、基本で行う点検は一般的に、床下や小屋裏を外側や点検口から目視するだけになります。基本料金で事前にどこまで点検してもらえるか、インスペクション実施業者に確認しておくといいでしょう。
インスペクターが建物の中に入って点検を実施する場合、または機械を使った精度の高い検査、更に耐震性の審査を行う場合などはさらに追加料金がかかり、場合によっては10万円を超える場合もあります。これは一見、高額のように見えますが、建物の築年数が古かったり、建物の状態が不安だったりする場合には、インスペクションを実施することで、後々のトラブルを避けることができるため、前向きに検討してみてはいかがでしょうか?
自治体によっては補助金を受けられる可能性があります(一定の要件を満たす必要があります)。ぜひお住まいの自治体で補助金の制度があるか確認してみてください。
インスペクションの依頼はどこにすればいい?
インスペクションを行う会社は、専門業者のほか、不動産会社やリフォーム会社があります。単純に金額の安さだけで決めてしまうと、最低限の検査しかしてくれなかったり、逆に必要ではない修繕工事を勧められたりと、結果的に損をしてしまうことがあります。
ホームインスペクションの業者選びで大切なのは、実績や経験が物件の特徴と合っているかどうかです。インスペクションといっても、建物の種類や工法によって、確認項目が違います。検査してもらう住宅に類似した検査経験があれば、より適切な診断が期待できます。
今回の考察がお役に立てれば幸いです。
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