みなさま、こんにちは。《仲介手数料無料または割引》不動産流通システム、REDSエージェント、宅建士・宅建マイスターの下山聡です。
法改正を行う際にたびたび登場する「パブリックコメント」。このたび、パブリックコメントで不動産売買の仲介手数料について意見募集が行われているのを見つけ、気になったので調べてみました。
仲介手数料についてのパブリックコメントが!
国の行政機関は政策を実施していくうえで、さまざまな政令や省令などを定めます。これら政令や省令を決めようとする際に、あらかじめその案を公表し、広く国民の皆様から意見を募集する手続きが、パブリックコメント制度(意見公募手続)です。
行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てることを目的としているそうです。そんなパブリックコメント制度で、気になる案件が。
“「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」の一部改正案に関する意見募集について”というものです(意見募集は終了)。
なんと、仲介手数料について一部改正する意見募集のようです。
背後にあるのは空き家問題
この意見募集の背景には、空き家問題があるようです。
「空き家」は身近な問題です。実家を相続したり、独り暮らしの親が施設に入居したりすることで、これまで家族が住んでいた家が空き家になっています。
一度空き家になると、「建物の解体費用をかけたくない」「家財・荷物を片付けられない」「将来自分や親族が使うかもしれない」などの理由から、そのまま放置されてしまいがちです。
空き家を放置するとさまざまなリスクがありますし、以下のような問題を起こして地域にも迷惑をかける可能性があります。
- 倒壊:空き家の傷みが進み地震や台風などで倒壊してしまう危険性
- 外壁落下:外装材や屋根材などの破損を放置すると、それらの部材が落下する危険性
- ネズミ・害虫など:ネズミや害虫などが大量発生すると、不衛生な状態に
- 景観の悪化:ごみの散乱、山積みや外壁の破損・汚損などが放置されると景観に悪影響
- 悪臭:腐敗した動物の糞尿やごみなどが放置されると悪臭が発生
- 不法侵入:壊れた窓などから不法侵入者に出入りされると、周辺地域の治安が悪化
- 枝のはみ出し:隣の敷地や道路などへ枝がはみ出すと、周囲の建物を傷つけ、歩行者を妨害
しかし、空き家とはいえ個人の財産なので、国や自治体が勝手に立ち入ったり、取り壊したりすることはできません。
空き家対策に国と自治体が本腰
そのため、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が2023年12月13日より施行されました。自治体が空き家に立ち入って実態を調べたり、空き家の所有者に適切な管理をするよう指導したりすることが可能になり、空き家の跡地の活用を促進できるようになったのです。
法の改正により、放置されて問題となる空き家を「特定空き家」に指定したり、その危険性のある空き家を「管理不全空き家」に指定したりすることで、自治体が強く関与できるようにもなりました。自治体から「管理不全空き家」や「特定空き家」としての指導を受け、それに従わずに勧告を受けると「固定資産税等の軽減措置(住宅用地特例)」が受けられなくなります。
「国定資産税等の住宅用地特例」とは、土地に対する固定資産税が課税される年の1月1日(賦課期日)において、住宅やアパートなど、人が居住するための家屋の敷地として利用されている土地(住宅用地)は、税負担が軽減されるというものです。その特例が受けられなくなります。
政府は空き家が放置される原因に手を打っている
空き家が放置される原因のひとつに、「住宅が建っていたほうが更地にするよりも減税になる」といったことがありました。そこで政府は「特定空き家」や「管理不全空き家」に対しては、固定資産税の減額措置を解除したり、逆に空き家を売却した場合には譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特別控除の適用を認めたりする措置を取っています。
実は、問題を大きくしているのは、所有者が分からない場合です。相続を繰り返す際に登記をしない場合、所有者が判明しないという事例もよくあります。このため、相続登記の申請を義務づける改正を行い、2024年4月から施行されています。
空き家解消の一手として、仲介手数料改正?
空き家を放置する原因のひとつに、売っても大して値がつかないことがあります。不動産会社が不動産売買を仲介した際の手数料には規制があります。
売買では、価額が400万円を超える場合に「売買価格(税抜)×3%+6万円+消費税」といった速算式があり、一般的に知られております。
しかしながら、400万円以下の仲介した際の手数料は下記となります。
- 200万円超~400万円以下:売買価格(税抜)×4%+2万円+消費税
- 200万円以下:売買価格(税抜)×5%+消費税
200万円の取引なら仲介手数料は最大で10万円+消費税しか受け取れません。
放置された空き家はこうした低価格な取引にしかならないことが多いため、地方の空き家を不動産会社が仲介しても経費を差し引くと手元に残らないといったことが考えられます。都市部の高額な住宅の売買にリソースを向けたほうが効率的なので、不動産会社が仲介に積極的に取り組みづらいともいえます。
こうした背景を受けて、パブリックコメントで「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」の一部改正案に関する意見募集をしていたのでしょう。
概要は、低価格な取引となる空き家の売買などの仲介をした場合、価額が800万円以下であれば仲介手数料を従来の規定より多く受け取ることができるようにするというものです。ただし、「30万円の1.1倍に相当する金額を超えてはならない」などの制限を設けています。また、長期間空き家の賃貸借の仲介についても、仲介手数料の上限を緩和する案となっています。
まとめ
実家や自宅を空き家にしないため、また空き家となっても放置しないために家族の話し合いが大切です。空き家はそのままにせずに、「しまう」(除去)・「活かす」(活用)の行動をとることが肝心といえるでしょう。
- 空き家を「しまう」:解体を行い、跡地を広場や駐車場、新しい建物の敷地として活用
- 空き家を「活かす」:改修を行い、売買用の住宅、用途替えをしてカフェなどとして活用
空き家が少しでも市場に出回り、しまい、活かすことができればいいと思います。それでは、また、お会いしましょう。【REDS】不動産流通システムの下山でした。
【REDS】不動産流通システム
下山 聡
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