REDSエージェント、宅建士の近藤未来です。
不動産を売却した場合、利益が出るケースと損失が出るケースがあります。不動産の売却による所得を「譲渡所得」と言いますが、利益が出れば譲渡所得がプラス、損失が出てしまうと譲渡所得がマイナスとなります。
譲渡所得がプラスになった場合は原則、確定申告が必要となります。今回は譲渡所得がプラスになった場合の確定申告の手続きについて解説します。
確定申告をする、しないの判断の決め手は?
売却時の確定申告が必要かどうかは、次の3つのうち、どのケースにあてはまるかで判断できます。
- 譲渡所得がプラスの場合は確定申告が必要
- 譲渡所得がゼロの場合は確定申告が不要
- 譲渡所得がマイナスの場合は確定申告をして得をすることがある
譲渡所得がプラスの場合
不動産を売却して譲渡所得がプラスになった場合は確定申告が必要です。この譲渡所得、どのように計算するのか、詳しく解説します。
譲渡所得の算出方法
不動産を売却したときの譲渡所得は次の計算式で算出します。
●譲渡所得=売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除(最大3,000万円)
取得費とは、マンションの購入代金や購入時に支払った諸費用のことです。主な取得費には次のような項目があります。
- 購入価格
- 購入後の設備費や改良費
- 購入時の諸費用(登記費用、印紙税、仲介手数料など)
- 不動産取得税
※相続した不動産を売却して利益が出た場合、取得費は被相続人が購入した際の売買契約書など証明できるものがあれば、価格や諸費用の金額を引き継ぐことができます。不動産の購入価格が不明な場合は、売却した価格の5%を取得費とします。
注意しなければいけないのは、取得費の計算上、建物の価格や設備費などは実際にかかった金額ではなく、そこから「減価償却費相当額」を差し引いた金額になるということです。建物や設備は、年数が経つに従い徐々に価値が減っていきます。1年間の価値の減少分を「減価償却費」といい、毎年、減価償却費分の価値が減少していきます。
減価償却費の計算は、次のとおりです。
●減価償却費 = 取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数(※)
(※)1年未満の端数は、6月以上は1年、6月未満は切り捨てます。
建物の構造 | 耐用年数 | 償却率 | |
---|---|---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 | 70年 | 0.015 | |
れんが造、石造又はブロック造 | 57年 | 0.018 | |
金属造 | 骨格材の肉厚4mm超 | 51年 | 0.020 |
骨格材の肉厚3mm超4mm以下 | 40年 | 0.025 | |
骨格材の肉厚3mm以下 | 28年 | 0.036 | |
木造又は合成樹脂造 | 33年 | 0.031 | |
木骨モルタル造 | 30年 | 0.034 |
譲渡費用とは、マンションを売却するために直接かかった経費のことをいいます。主な譲渡費用には以下があります。
- 売却時に不動産会社に支払った仲介手数料
- 印紙税
- 建物の解体費用
3,000万円の特別控除とは、自宅マンションを売却したときに一定の要件を満たすと、譲渡益から最大3,000万円の特別控除を差し引くことができるというものです。これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
この特例が適用できる場合は、次の計算式で譲渡所得を算出します。
●譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除(最大3,000万円)
ただし、3,000万円の特別控除と住宅ローン控除は併用できません。そのため、マイホームを買い替える場合には、どちらの控除を選択したほうがいいか、十分に検討する必要があります。
譲渡所得がゼロの場合は確定申告が不要、マイナスならすれば得
不動産を売却して譲渡所得がゼロまたはマイナスになれば確定申告は不要です。
不動産を売却して譲渡所得がマイナスになったとき、確定申告をすることで得をすることがあります。一定の条件を満たしていれば、特例を利用して、譲渡による損失(譲渡損失)を取り戻せる場合があるのです。
1月1日現在で5年を超えて所有している不動産を売却し、譲渡所得がマイナスになった場合、一定の要件を満たすとその譲渡損失を給与所得など他の所得から差し引くことができます。これを「マイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といい、適用されるのは次の2つのケースとなります。
1.不動産を買い替えた場合
不動産を売却して新しいマイホームに買い換える場合、自宅マンションの譲渡所得がマイナスになったときに適用できます。ただし、新しいマイホームを購入する際に一定の住宅ローンを利用するなどの条件があります。
2.不動産を買い替えない場合
住宅ローンが残っている不動産を、住宅ローンの残高よりも低い金額で売却して譲渡損失が生じた場合に適用できます。
どちらの特例も、確定申告をすることによって初めて受けることができます。
確定申告の手続きの流れ
マンションの譲渡所得の確定申告は、マンションを売却した年の翌年の2月16日から3月15日の間に行う必要があります。
確定申告を行う場合の手続きは次のとおりです。
- 譲渡所得の計算
- 特例が受けられるかをチェック
- 申告書類に記入
- 申告書の提出
確定申告時に必要な書類は以下のとおりです。
- 売却時の売買契約書
- 取得時の売買契約書か建築工事請負契約書
- 取得費の領収書
- 譲渡費用の領収書
- 譲渡した不動産の全部事項証明書(取得先:法務局)
- 給与所得者の場合は源泉徴収票(取得先:勤務先)
特例を受ける際に必要な書類
特例を受ける場合は、上記の書類のほか、それぞれの特例により提出が必要な書類があります。
●3,000万円の特別控除の特例
- 戸籍の附票など(入手先:本籍地の市区町村)
●軽減税率の特例
- 戸籍の附票など(入手先:本籍地の市区町村)
●譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(不動産を買い換えた場合)
- 戸籍の附票など(入手先:本籍地の市区町村)
- 買い替えたマイホームの売買契約書
- 買い替えたマイホームの全部事項証明書(入手先:法務局)
- 買い替えたマイホームの借入金残高証明書(入手先:借り入れた金融機関)
- 居住用資産の譲渡損失の明細書
- 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
●譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(不動産を買い替えない場合)
- 戸籍の附票など(入手先:本籍地の市区町村)
- 売却したマイホームの売買契約日前日の借入金残高証明書(入手先:借り入れた金融機関)
- 特定居住用資産の譲渡損失の明細書
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
ご不明な点がございましたら税務署や税理士に相談し、書類がきちんとそろっているかを確認してください。また、自分で確定申告をする時間がないという人は、税理士に確定申告を依頼することを検討してみてもいいかもしれません。
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