建築や家具の設計に欠かせない人間工学(エルゴノミクス)を解説 | 仲介手数料無料のREDS

こんにちは。REDSリフォーム宅建士の水谷です。

今回は建築や家具の設計の基礎となる人間工学と人体の寸法、姿勢と動作及び人間の感覚や知覚の特性についてお話いたします。

人間工学

人間工学(エルゴノミクス)とは

人間工学(エルゴノミクス)とは、人間の作業能力とその限界を知って、仕事を人間の生理・心理学的な話特性に適合させていく科学です。アメリカではヒューマンエンジニアリング、ヨーロッパではエルゴノミクスと呼ばれます。

人間工学で最も基本とされているのが人体寸法です。人体寸法は静的なものと動的なものに分かれます。静的人体寸法とは、人体そのものの寸法をいい、動的人体寸法とは、人間の動作に必要な空間、および人間と物とを組み合わせた空間を対象にした寸法を指します。インテリアを考える際、人体各部の詳細にわたる静的な寸法が必要ですが、同時に、人間の動きとその空間を含む動的な寸法も重要です。

人体寸法の平均値と標準偏差の応用

人体寸法は、民族、年齢、性別などによって違いがあり、地域によっても差があるため、ある一つの数値をもって、全体に共通する寸法と考えることは適切ではありません。例えば、出入口の高さを設計するような場合は、身長の平均値で決めると50パーセンタイル(計測値の分布を小さい方から並べて累積の割合で表したもの)の人しか満足させられません。そこで、平均値+2σ(シグマ)までの身長とすると、約98パーセンタイルの人までカバーできます。

日本人の平均身長を踏まえ、成人男子165cm、成人女子155cmが設計の目安として用いられます。分布のばらつき具合を示す標準偏差σ(シグマ)は5cmで、統計学上は身長の平均値±σの範囲に約68%、±2σの範囲に約95%の人が含まれると考え、女子の平均身長は、男子の平均身長-2σとなります。

要するに、ほとんどの人が使える高さとするためには、「男子の平均身長(165cm)+2σ(10cm)」に「適当な空き」を加えて設計するとよいというわけです。

人体寸法の略算値

人体各部(主に高さ方向)寸法は身長と比例関係にあります。身長を基準にして必要寸法を略算することができます。

【人体寸法の略算値】

●身長=H

身長

●指先点高=0.4H

指先点高

●下腿高=0.25H

下腿高

●眼高=0.9H

眼高

●指極=H

指極

●机面高=0.4H

机面高

●肩峰高=0.8H

肩峰高

●肩幅=0.25H

肩幅

●座高=0.55H

座高

人間の姿勢の分類

人間の姿勢は、①立位②椅座位③平座位④臥位の4種に分類できます。

①立位:背のび、直立、浅い前かがみ、浅い中腰、深い中腰

立位

②起座位:椅子に座った姿勢、壁などに寄りかかった姿勢

起座位

③平座位:しゃがみ、片膝立ち、膝立ち、四つん這い、正座、あぐら、立膝など

平座位

④臥位:寝た姿勢、仰向け、うつ伏せ、横向きで寝た姿勢

臥位

作業域(動作域)

人間が一定の場所にあって、身体の各部位を動かすとできる空間領域を作業域(動作域)といい、水平作業域、垂直作業域、立体作業域があります。水平作業域は、主に作業面上の手の動く範囲のことをいい、肘を曲げて楽に動かせる範囲を通常作業域(成人男子で約40cm)、手を伸ばして届く範囲を最大作業域(同50cm)といいます。

よく使用する主な操作機器は通常作業域内に配置し、従属的な作業の用具は、最大作業域の線に沿って配置するといいでしょう

インテリアにおける感覚の働き

人間は、さまざまな感覚を総合してインテリア空間を感じ取っています。例えば、畳の上を裸足で歩くときは、足の裏の圧覚のみならず、素材の温もりを感じる温冷感、ふかふかした素材の抵抗力を加速度の変化として感じる運動感覚などが統合されています。

視覚の特性

●視野と視線:頭を固定して両眼で見える範囲は、左右200度・上下130度程度ですが、注視できる範囲はわずかに1度です。この視野範囲で見ることを中心視(焦点視)、中心視の周辺で見ることを周辺視(環境視)といいます。ペンダントライトやウォールキャビネットなどは、立位での目と頭頂部の間の位置に突出しやすいので、額を打ちつけないよう配慮します。

●可視光域:人間が光として感じ取れる電磁波の波長の範囲。波長は380~780nm(ナノメーター)。

●比視感度:人間の目が感じる明るさ感のこと。比視感度は室内の明るさにより変わり、明るい所では黄緑、暗い所では緑が最も明るく見えます(プルキンエ現象)。

●順応:目の感度が周囲の明るさに合わせて自動的に変化すること。暗い状態から明るい状態に慣れる過程を明順応(1分程度)、明るい状態から暗い状態に慣れる過程を暗順応(30分程度)という。

聴覚の特性

聴力は20歳ごろが最も優れており、その後年齢とともに低下するといわれます。音の性質は、以下の3属性で表されます。

●強さ:音波の持つエネルギーのこと。人間の耳に感じられる音の大小(強さのレベル)は、デシベル(dB)で表される。一般に、人間の耳が聞くことのできる範囲は0~120dB程度であり、130dBになると耳が痛くなり、150dBで鼓膜が破れるといわれている。

●高さ:音波が1秒間に振動する回数(周波数)のこと。単位はヘルツ(Hz)。周波数の値が小さい音は低音、大きい音は高音となり、一般に20~20,000Hzが可聴音域。

●音色:さまざまな高さ(周波数)の音が混合されることによりもたらされる感覚のこと。なお、音叉の音は単一の周波数からなる音で、純音と呼ばれます。

嗅覚の特性

においは、五感の中でも原初的感覚といわれ、記憶とも関係が深いとされます(路上の花の香りで、過去の体験を思い出すなど)。汚物や排水の悪臭などネガティブなイメージもありますが、香りやアロマテラピーなどポジティブな面は、積極的にインテリア空間に利用されます。

皮膚感覚の特性

皮膚感覚は、視覚とともに物体のテクスチャー(材質感)を知るための重要な感覚です。人間が直接触れる家具や機器・設備のほか、床・壁・建具などは風合いや馴染みなどの感触要素を十分に検討する必要があるでしょう。一般に休息性の高い場面ほど自然材料が、作業性の高い場面ほど人工材料が利用されることが多くなっています。

まとめ

人間工学と人体の寸法、姿勢、動作、感覚、知覚についてのブログを読んでいただき、ありがとうございました。これらの知識は、建築や家具の設計において重要な要素であり、人々の生活を快適にするために役立てられています。

人は空間に適応する存在であり、その適応性を最大限に引き出すためには、人間工学の原則を理解し、実践することが不可欠です。人々が日常的に触れる家具や建物は、私たちの身体の寸法や動作に合わせて設計されています。そして、私たちの感覚や知覚は、環境との相互作用を通じて形成されています。

お読みいただき、ありがとうございました。

 

Source

コメント

タイトルとURLをコピーしました