REDSの宅建士、有馬春志です。
経費を計上する際には、金銭の受け取りがあったことを証明する領収書が必要になります。しかし、発行された領収書を受け取っていても、商品やサービスを購入した側が領収書を紛失してしまうこともあります。
このように、手元に領収書がなければ、経費を計上することはできないのでしょうか。
(画像はイメージです)
領収書がないと経費として認められない可能性
事業活動に必要な商品やサービスを購入した場合、その費用を経費として計上できます。計上した経費は、収益から差し引くことができ、課税所得の額を減らすことにつながります。
日本は所得税、相続税、贈与税で所得や資産が多ければ多いほど税率が高くなる累進課税制度を採用しています。
個人事業主の場合、個人の所得を申告し所得税を納めることになるため、課税所得を減らせばその分、税負担を軽くできる可能性があります。法人の場合は法人税を納めますが、必要な備品の購入費や接待交際費などを経費として計上することで、法人の所得を減らせ、節税対策として活用することが可能です。
ただし、費用を経費として計上するためには、領収書が必要になり、支払い先から領収書を受け取っていなかったり、紛失していたりする場合は、経費として認められない可能性があります。
領収書の発行は義務
領収書は「受取証書」という書類の一種で、債権者が債務の弁済を受けたことを証明するために債務者に交付するものです。債務というと一般的には借金をイメージしますが、法的には他人に金銭や物を渡す義務のことを指し、弁済とは債務が履行され、債権を消滅させることを意味します。
債務の弁済と領収書の発行は「同時履行」といって、どちらも法的な義務となっており、民法第486条では「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる」と定めています。
平たくいえば、顧客が商品の提供を受けるのであればお金を払う義務があり、お店はお金を受け取るのであれば商品を提供して、領収書を発行する義務があるということです。
原則として、利用者が求めた場合は領収書を発行する義務があるので、もし商品やサービスを購入して領収書が交付されない場合は、お店や会社に領収書の発行を求めましょう。
売上をごまかす目的で相手が故意に領収書を発行しないケースもありますが、単純に渡しそびれていたり、発行を忘れていたりすることがほとんどなので、発行をお願いすれば、通常は領収書を受け取ることができます。
もし、特に理由もなくお店や会社から領収書の発行を拒否された場合は、同時履行が成り立たないため、代金の支払いそのものを拒否しましょう。
領収書の代わりになるのはどんな書類?
領収書が発行されなくても、支払いの事実があったことを証明する書類があれば、「受取証書」として処理することができます。
販売者の名前をはじめ支払い先や取引のあった日付、金額や商品名などの必要事項が記載されたレシートは受取証書として領収書と同等に取り扱われます。
たとえば、小売店で商品を購入した際に、手書きの領収書を発行してもらうこともあるかと思いますが、万が一発行してもらうことを忘れていたとしても、レシートがあれば問題はありません。また、経費計上を行ううえでは、請求書や納品書、各種利用明細書、出金伝票なども領収書の代わりに利用することができる場合もあります。
領収書の再発行は無理強いできない!
注意したいのは、領収書を紛失してしまい、さらに領収書の代わりになる書類も存在しないケースです。こうした状況では、取引先のお店や会社に領収書の再発行を依頼したいところですが、相手にしてみれば、本当に紛失したのか、経費の水増しが目的なのか判別できないため、原則として再発行を断ることにしているお店や会社もあります。
領収書を求められた場合、発行する義務はありますが、再発行は義務ではないため、断られても無理強いはできません。
もし領収書を再発行してもらえなければ、出金伝票に支払い先や取引のあった日付、金額や商品名などを記入しておきましょう。出金伝票は出金があった際に、その内容を記載しておく伝票で、絶対ではありませんが、この出金伝票の記録をもって経費が認められる可能性もあります。
また、すべての支払いをクレジットカードや銀行振込にすれば、カード会社や銀行に支払いの履歴が残るため、領収書の代わりに、出金があったことを証明できます。
前提として領収書を紛失しないように管理しておくことはもちろんですが、紛失しても問題がない仕組みを構築していくことが大切です。
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